髙木教授、日本口承文芸学会会長に就任2017年06月30日
教育学科子ども教育専攻の高木史人教授がこのたび日本口承文芸学会会長に就任しました。
髙木教授にインタビューしました。
Q 日本口承文芸学会とはどのような学会ですか?
A 「口承文芸」とは口伝えの文学のことです。もともとは日本の民俗学の創始者とされる柳田國男が1932年に使い始めたことばです。文学の「文」とは文字を表すのでそれを音声のことばと接続させるのはおかしいのですが、そういう矛盾する複合語をあえて使うことで、こういうジャンルがあると世間にアピールしようとしたものです。
領域は極めて広く、新語作成や命名、ことわざ、唱えごと、なぞなぞ、うた、神話、昔話、世間話、伝説、語り物などを研究するのが「口承文芸」研究です。
日本口承文芸学会は、そういう口伝えの文化を研究する人びとの日本での学会として、1977年に柳田國男の弟子の関敬吾を会長として発足しました。今年で41年になる組織です。会員は300人台で推移しています。研究対象は日本の国内に止まらず、世界各地の口伝えの文化を研究する人が会員にいます。今回、学会事務局は國學院大学の飯倉義之さんが引き受けてくださいました。
Q 今後の抱負をお聞かせください。
A じつは、今までの会長は全員、東京地区、関東地区から選出されていました。今回、初めてみぎ以外の地区から選出されたので、少し異なる視線から学会を見つめることができないかと考えています。元会長の川田順造さんは「知の三角測量」を主張して、西アフリカ、フランス、日本の文化をそれぞれ追究することが互いの差異を明らかにするために有効だと述べています。そのような大規模なことは私にはできませんが、せめて日本国内でも一地方を言挙げする地域学ではない相互比較の可能性を会員と探っていきたいと思います。
また、人文学では、本質は歴史の外にあるのではなく、歴史的推移の中から生成します。むずかしい言い方ですが、人文学の本質はできごとの後を追いかけて形を整えていきます。口承文芸もそうやって1930年代に出来上がってきましたが、それからさらに1世紀近くを経過して、私どもの研究領域を積極的に見直していく必要があると思います。たとえば昔話的領域では、最近、「語り部」と呼ばれる人びとが新しく出来上がってきています。「伝統」とは新しい文化への僣称ですが、そういう「伝統的」な「語り部」をも分析の視野に含んだ領域の設定がされていけばよいと考えています。
じつは、2018年度の大会を関西福祉科学大学で開きます。一般市民の参加を歓迎しています。聴講は無料ですので、開かれた学会になればよいと思います。