学長挨拶
本学は対人援助に特化した5つの学部で構成されています。
私たちはどちらかというと、世界を舞台に活躍する人を育成するという方向性ではなく、しっかりとした倫理観・教養を持ち、資格をしっかり取り、自分を育ててくれた地域で基幹的な人間となって活躍してほしいと考えています。
関西福祉科学大学 学長
八田 武志
八田学長に突撃質問!
Q.どんな学生が入学するのですか?
本学には、「人の手助けをしたい」という心の優しい学生が入学してきます。「一発当ててお金持ちになりたい」という人はあまりいなくて(笑)。「医者になるまで勉強しきれないけど、人の役に立ちたい」というような思いをもった人が多いですね。国家資格も目指せますから、全国どこにでも職場がありますし、そのなかで地元に戻り、30年・40年とその地域の人から頼りにされて生きる、そういう人生を送るという人生設計を実現させたいと思っています。
本学で取得できる資格試験は、基本的には指定された点数を上回れば資格が取れます。順位が決め手となるタイプの試験ではないので、基準となる成績さえ取れればいいのです。つまり、勉強すれば必ず到達できるものです。特に社会福祉士や管理栄養士の試験は、真剣に繰り返し取り組めば、必ず報われるタイプの試験。だから私は、先生方にきめ細かく学生に対応するようにお願いして、しっかり学習の習慣をつけて合格点をクリアさせたいと考えています。
Q. 資格取得に注目するなら専門学校のほうが強そうですが、大学にいくメリットって何なのでしょうか?
医療系の専門職の高学歴化は、我が国はもちろん世界の趨勢ですね。次々と新しい機器や知識が必要とされる時代になっています。専門学校では資格試験のために必要最低限の科目構成なので、短期間ですみますが、将来を見据えると専門職としての長い期間、周辺関連職種の人たちと連携して働いていくのは大変だろうと思います。
大学は専門学校より時間的余裕があるので、専門周辺知識や幅広い教養を身に付けることができます。専門学校では足りない部分を補えるのです。例えば、対人援助の仕事でいうと高い対人折衝力が求められるようになってきています。そのためには、広い教養が必要です。教養っていうのは「知識・情報」です。「美空ひばりの歌が歌える」ことも教養なんですよね。対人援助の仕事で老人ホームに行ったとき、現代の歌しか歌えない人、それは教養がないということになる。河内音頭が踊れるとか、対象者の年齢に合わせた歌が歌える、話題がある、そういう人は、教養があると言えます。そのためには、自分の関心事だけの専門知識だけではなく、幅広い事柄に関心を持たねばなりません。私たちはそれをサポートしていきたいと思っています。
また当然、一方で高い倫理観を持って働かないといけないという点もあります。もちろん、資格を確実に取ってもらうために、今まであまり勉強する習慣がなくても、本学に来てれば資格試験に届くようなサポートをしっかりします。就職を支援して、自分に自信を持ち長い期間、仕事に誇りを持って社会に貢献できる人を育てる、これが私の仕事だと思っています。話は広がりましたが、まとめると、大学に行くメリットは、専門職の高学歴化という世界的な趨勢に乗り遅れないこと、幅広い学びができる時間と場があるということでしょうか。
Q.これからどういう学校にしたいと思われていますか?
現在、5つの学部で構成していますが、当面は医療などの、対人援助に変わるような学部を充実させることを課題にしています。その先はもう少し広げるとか、そういう可能性もあるかと思いますが、個人的にはあまり大きな大学にはしないほうがいいと思っています。3000名弱の学生数、150名位の先生という規模が、一人一人の学生にきめ細かい対応ができる適正規模だと考えています。
Q. 学長の言われる「教養」について、お考えをもう少し詳しく聞かせてください。
人間の能力っていうのは基本的に正規分布するものです。学力も知能も、真ん中の人が一番多い。「良い方の人」は基本的にほっておいても、自分でやっていけるのです。でもそうでない人たちに関しては、対応することが必要になります。どう対応するかといえば、「人間には非常にバラエティ豊かなものがある」ということを認識することが基本だと思います。とりわけ対人援助を仕事にする人の基本なので、それをしっかりと学ばせないといけないと思っています。世の中にはいろんな人がいるから、それらの人に対応することができるには、ものすごく教養が必要で、しっかりした倫理観が必要なのです。倫理とは、正しいという価値判断のことで、時代や地域で変わる性質がありますが、グローバルな時代では一国の利益のみを考えない視点も重要です。つまり、現代人の教養とは、グローバルな視点からみても適切であるとみなされる知識・情報と定義できるのではないかと思います。
残念ながら、最近では「限られた層」の人たちとしか付き合わない。もっと言うと、SNSとかWEBサービス上でしか、他人とは関わらないといった状況が顕著になっているように思います。私が子どもであった時代には、同学年の友人以外にも青年団の人や高齢者など、あらゆる年齢層の人たちと接することで教育を受けてきたと言えます。それが現代ではなかなかできない。例えば、私は自分が生まれる10年も15年も前に流行った歌を知っています。昭和10年代に流行った歌、たとえば東海林太郎の歌や軍歌を歌えるのです。それは日常的に子どもの頃に高齢者などの年齢層の人たちといろんな場面で接してきたからですよね。
高齢者施設だったら、どういう人たちが入居していて、どんな話題があれば親しくなれるか、というノウハウ・テクニックをしっかり学んで、可愛がってもらうことも、仕事を継続していく上で大事だと思いますね。さらに言えば、グローバルな視点からも受け入れられる倫理観を忘れずに、しなやかに、そしてしたたかに人生を生き抜いて欲しいと願っています。