私が社会福祉士を目指した理由 -自分らしく安心して生活できる社会を支えるために-2020年02月27日
社会福祉学科 教授 橋本有理子
1.私が社会福祉に関心を持つようになったきっかけ
私が社会福祉、特に高齢者福祉に関心を持つようになったのは、大学3年生のときの病院実習で、ある高齢女性の方との出会いにさかのぼります。その女性は、治療目的での入院ではなく、退院後の先がなかなか見つからないため、そのまま入院を続けておられる方でした。
「こんにちは、橋本と申します。よろしくお願いします」と、ベッドに横たわっている女性の方に話しかけても、顔や目をこちらに向けることはなく、病室の白い天井をまっすぐ見つめておられ、また手足の関節も曲がり、動けない状態でした。
看護師の方に、「この方にはご家族はおられますか。お見舞いの回数はどうですか」と質問したところ、「入院時の手続きのときに、ご家族をお見かけしましたが、おそらく次に来られるときは、この患者の方がお亡くなりになったときでしょうね」との話をうかがい、言葉を失いました。
「では、この女性の方は何のために生きているのだろうか」と悲しくなると同時に、なぜか、その女性の方と自分を重ね、それまであまり深く考えたことがなかった、自分の将来を不安に思うようになりました。そこから、わが国の高齢者福祉に関心を持つようになり、「自分に何かできないだろうか」と思うようにもなりました。
2.「本当のサービス」とは
その後、大学4年生のときに、デンマーク・スウェーデンの福祉研修に参加をさせていただく機会がありました。その研修を終え、印象深く思ったことは2点あります。
①社会福祉は、経済や住居、文化や教育など、様々な分野から成り立っていること
②「本当のサービス」とは一体、何だろうかと考えるようになったこと
私たちは日々、生活している中で、様々なサービスを受けていますが、北欧研修を通して、本当のサービスとは、「その人が最期まで自分らしく安心して生活をおくることができるサービスである」と思うようになりました。
研修後、「自分らしく安心して生活できる社会を支えるにはどうすればよいか」と考えた結果、まずは相談援助の国家資格である、あこがれの社会福祉士を取得しました。しかし取得後、高齢者施設で、様々な利用者や家族への相談援助を通して、やりがいも感じられましたが、「自分らしく安心して生活できる」ことの難しさを実感することもありました。そして現在は、その難しさを打破するにはどうすればよいかを一緒に考え、よりよい社会づくりを支えようとする志を持つ未来の担い手の養成に関わっています。
手に持っていますのは、大学4年生で研修に行き、作成しましたデンマーク・スウェーデンの福祉研修報告書です(この研修で、夢や希望がいっぱいつまった社会福祉を考えるようになりました)。