心理学は文系なの?それとも理系なの?
  • 2025.07.23

 心理学は哲学と医学、2つの異なる学問から派生したため、文系と理系、どちらの要素も含んだ学問です。大学の枠組みでは心理学は文系として分類されており、心理学科のほとんどは文系学科に属しています。しかし、心理学で重要となる心理実験では統計学が必要不可欠のため、実際の心理学の講義は理系的な要素が高いのも事実です。

 この記事では、心理学が文系かつ理系である理由やその背景について解説するほか、心理学の文系的科目と理系的科目を紹介します。

目次

心理学は文系 or 理系?

 心理学を学びたいと考えたときに疑問に思うことのひとつに「心理学は文系なのか、理系なのか」があります。進路決定の際、自分が将来なりたい職業、携わりたい仕事が決まっている人は、それに合わせた大学の学部や学科を選択する人がほとんどです。

 公認心理師など心理学が関わる仕事の興味がある人は、文系と理系、どちらの学部や学科を選べばよいのでしょうか。派生したきっかけと大学の枠組みとして立ち位置、2つの角度から心理学を見ていきましょう。

心理学は文系かつ理系!

 心理学が文系か理系かという問題は、心理学の歴史が大きく影響しています。心理学は哲学(文系的分野)と医学(理系的分野)、2つの学問から派生した分野だからです。

 心理学が誕生したのはおよそ140年前ですが、古代ギリシャでは哲学のひとつとして心の概念を考察していました。17世紀に入り、フランスの哲学者デカルトが提唱した「生得説」は心理学にその後に大きな影響を与え、19世紀頃まで心理学は哲学の領域として扱われてきました。

 19世紀頃になると、人の心の研究が盛んになり、さまざま実験が行われるようになります。これまで哲学の一領域だった心理学は、医学の飛躍的な発展とともに、今度は医学の1分野としてポジションを確立しました。

 そのため、心理学は文系的な要素と理系的な要素の2つを合わせ持つ学問といえるでしょう。

大学の学問系統では心理学部は文系

 では、大学の学問系統から見たときの心理学はどうなのでしょうか。
 大学の心理学部は文系学部に位置しています。また、心理学を専門的に学べる学部についても、教育学部や文学部、人文学部といった文系学部ばかりです。そのため、心理学の専攻を希望している人のほとんどは、文系科目で受験することになります。国立大学を志望していない限り、理系科目の受験は必要ありません。

 しかし、前述のとおり心理学は医学と強いつながりがある学問でもあります。文系の認識で心理学部に入ったあと、講義を受けていくうちに理系の要素を色濃く感じることも多くなります。その理由は、心理学では心理実験が重要で、実験で集めたデータの統計をとる「統計学」が必要になるからです。
 実際、心理学の講義では必ず「統計学の基本理論」があります。講義の内容を理解したり論文を書くときに困らないよう、中学数学の平均と中央値あたりを復習しておくとよいでしょう。

理系から心理学を学ぶ人もいる!

 大学の学問系統としての心理学は文系科目として扱われているため、心理学を学べる学部の多くは文系です。しかし、心理学には統計学が必要不可欠のため、入口は文系でも、実際には理系的な勉強が重要です。

 「心理学を学びたいけど理系の学科に進みたい」という人もいるでしょう。そういった場合は、自分がなぜ心理学を学びたいのか、心理学のなかでもどのような分野を学びたいのか、将来どういった職業につきたいのかをよく考えて大学や学部学科を選択する必要があります。

 例えば、公認心理師をめざして心理学を専攻したいケースを例にあげてみましょう。
 公認心理師になるには、公認心理師をめざせる大学を卒業後、大学院に入学し、必要な科目を履修して修士課程を修了する必要があります。[注1]

[注1]厚生労働省:公認心理師試験の受験を検討されている皆さまへ

 また、心理学で用いる統計手法である「カイ二乗検定」や「回帰分析」「重回帰分析」などは、マーケティングにも活用することができます。どのようなとき、どのようなアプローチによって人間の購買意欲が促進するのか、というミクロ的・マクロ的な視点を追求し、経営学部や経済学部に進学する人もいるようです。

心理学部で学ぶ文系的な科目

 ここでは、心理学部で学ぶ文系的な科目を5つ紹介します。

1.哲学

 哲学は、人や世界、物事の根源のあり方や本質を見極めるための取り組みや営みについて考える学問です。心理学と結びつきの深い科目です。哲学の概念や基本的知識、哲学の主要な考え方や問題を学ぶことで、心理学への理解をより深めていきます。

2.心理学

 心理学は、人間の感情や行動、思考に科学的にアプローチし、自身でも認識していない深層心理を解明する学問です。
 心理学の分野は多岐に渡ります。基礎心理学と応用心理学に大別され、さらに研究対象や目的ごとにさまざまな分野に分かれています。

3.社会学

 社会学は、その名のとおり社会についてさまざまな角度から研究する分野です。社会学で定義される「社会」とは、人と人とが関わり合い集団となり、組織的な営みを行うことです。社会学の対象は幅広く、政治経済はもちろん、環境や文化、歴史、言語、教育にいたるまで、人と社会に関わるすべてのテーマを研究します。

4.倫理学

 倫理学とは、道徳心や善悪など人間として生きるうえでの規範を問う学問です。
 倫理学には規範倫理学、記述倫理学(倫理思想史)、メタ倫理学などの分野にわかれており、規範倫理学は人の行いについての道徳的な正しさを議論する分野です。

5.教育学

 教育学は、対象者の状況や時代背景に合わせ、適切な教育方法を研究する学問です。学校教育はもちろん、家庭内での教育や企業内でのキャリア教育など、教育に関わるすべての領域は教育学の研究対象です。

心理学部で学ぶ理系的な科目

 心理学部では統計学をはじめ、心理学と結びつきの強い医学概論や統計学を理解するために必要な基礎数学ほか、さまざまな理系科目を学びます。

1.統計学

 統計学とは、収集したデータを処理し、性質を分析する学問です。統計学は数字を扱う理系分野ですが、心理学を学ぶうえで重要な学問のひとつです。
 統計学には主に、記述統計と推測統計の2種類があります。
 記述統計は、集めたデータでグラフや表を作成し、その傾向からデータの特徴を把握する統計学です。推測統計は、大きなデータからその一部をサンプルとして抜き取り、サンプルの特性から元の大きなデータの特性を推測・検定する統計学です。

2.基礎数学

 大学で必要とされる数学の基礎知識を修得するための科目です。主な学習内容は、文字式の計算方から一次方程式、連立方程式、因数分解、指数関数、対数関数、加法定理、特殊関数を含む方程式、数列など、中学校や高校で学んだ数学を公式としてだけでなく、式の意味も習得できるよう復習します。

3.医学概論

 医療概論は、医療とは何か、医学とは何かについて考え、医学についてに素養を身につける科目です。
 講義を通して基礎医学・臨床医学・社会医学などにおける研究や診療活動についてや医療・医学がどのように発展してきたのかなど理解し、医学的な考え方や議論する能力を養います。

4.基礎科学概論

 科学・物理学・科学などの自然科学の分野から、保健や医療、福祉などの分野を学ぶために必要な項目の基礎知識を身につけるための科目です。例えば物理学分野では医学の基礎となる人体のなりたちと機能、化学分野では生命対の化学物質について、生物学分野では細胞の化学成分について理解し、遺伝による疾患やその治療について学びます。

5.生命科学概論

 生命科学概論では、生命化科学の歴史や生命科学に必要な方法論を知り、現代の技術革新によって今後の生命科学がどのように展開していくか、その可能性について学びます。

心理学科入学後に必要になる教科

 大学受験で希望の進路に心理学を選択した場合、受験科目とは別に高校生のうちから力を入れて学習しておくとよい教科があります。それは、数学と英語です。

1.数学

 上述のとおり、心理学は大学の学問系統としては文系に分類されていますが、自然科学的な手法で研究していく分野のため、統計学が必須です。心理学の講義には必ず統計学のコマがあるため、内容を理解するためにも、高校までの基礎数学の知識は習得しておきましょう。
 「数学が苦手なので心理学は無理かもしれない」と不安に思う人もいるかもしれませんが、心理学科における統計学の授業では、高度な数学知識が必要なわけではありません。高校時代に習った数学を復習すれば十分でしょう。

 また、大学では統計学とは別に基礎数学の科目があるため、入学後にも学習する機会はきちんと設けられています。

2.英語

 大学で心理学を学ぶうえで、数学の次に学習しておきたいのが英語です。心理学に限らずどの専門分野でも同様のことがいえますが、より多くの知見や重要な情報を入手するためには、海外論文を読むことが必須です。とくに心理学は感慨で盛んな学問のため、高校英語基礎レベルの読解力は身につけおくとよいでしょう。

 また、公認心理師をめざしている場合、さらに上のレベルの英語力が必要です。
 公認心理師の資格を取得するには、心理学系の指定大学院を修了し、資格試験に合格しなければなりません。大学院の入試科目には心理学の「専門科目」と「英語」があり、合格するには大学受験程度の英語知識が必要です。

 心理系大学院の入試では心理学に関する英和訳問題や、心理学で使用する専門用語の英単語について出題されることが多く、傾向がはっきりしています。
 将来心理系の職業に就きたいと考えている場合は、高校生のうちから英語をしっかり学び、対策を立てておきましょう。

心理学は文系と理系の要素を持つ学問

 大学の学問系統では文系として分類されている心理学ですが、哲学と医学という2つの異なる学問から派生したというその成り立ちから、文系でありながら理系の要素を持つ学問です。また、心理学の研究において統計学は必要不可欠なものであるため、心理学部や心理学科では必ず統計学の講義があります。
 理系から心理学をめざす人も多く、文系といえども高校の基礎数学の知識はしっかり身につけておいた方がよいでしょう。

 また、将来公認心理師をめざしている場合は、大学院の入試や修士論文の作成、資格取得後に心理士として働くうえで、英語力も重要です。大学入学前に大学受験程度の英語知識は習得しておきましょう。

 関西福祉科学大学・心理学科では、科学的データや実験にもとづいた心理学や心理学の最新分野の学ぶことができます。併設の関西福祉科学大学大学院に進学すれば、公認心理師の資格を最短ルートで取得することも可能です。

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