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公認心理師ってどんな資格?取得後の就職や職業、給与などを解説
  • 2023.06.27

 心理学についての資格は多くあり、資格を生かして医療や福祉、教育など多岐にわたる分野で活躍可能です。
 
 心理学の資格のなかでも2017年に誕生したのが公認心理師です。
 
 この記事では公認心理師の資格内容や資格取得後の就職先や給与などについて解説します。

目次

公認心理師ってどんな資格?

 公認心理師は、心理的に問題を抱えた相談者に対して心理学の専門知識に基づいたアドバイスを行うための資格です。

 公認心理師は教育や医療、福祉といったさまざまな現場で活躍しています。

公認心理師は心理に関する日本初の国家資格

 公認心理師は2017年施行の公認心理師法で定められた、日本で初めての心理に関する国家資格です。[注1]

 心理についての資格は、臨床心理士や認定心理士、産業カウンセラーなどが挙げられますが、いずれも民間資格です。

 公認心理師は相談者へのカウンセリングを実施して、助言や指導を通じて問題の解決を図ります。
 
 また、問題解決以外にも心の健康についての啓蒙も重要な仕事のひとつです。

[注1]厚生労働省「公認心理師法の施行について」

公認心理師と臨床心理士の違い

 公認心理師と臨床心理士とで異なる点は医療現場で見受けられます。

 従来、臨床心理士は臨床心理技術者として診療報酬の加算対象でしたが、2018年度からは公認心理師だけが診療報酬の加算対象となっています。

 ただし、2020年度の診療報酬改定では、2019年4月1日から当面の間、次のような条件の臨床心理士は公認心理師とみなされています。[注2]

  • 2020年3月31日の時点で臨床心理技術者として保険医療に従事している
  • 公認心理師に関する国家試験の受験資格を持っている

[注2]一般社団法人日本公認心理師協会 保健医療分野委員会「【解説】診療報酬に収載されている公認心理師が関与する業務」

公認心理師とほかの心理関係の資格との違い

 臨床心理士以外にも認定心理士や産業カウンセラーといった心理にまつわる資格があります。

 認定心理士は公益社団法人日本心理学会が心理学について、大学の専門学部の知識が備わっていることを認定する民間の資格です。

 そのため、直接職業につながる資格ではありません。

 また、産業カウンセラーも民間の資格です。

 同資格も職業に直結するわけではなく、産業医や保健師、企業の管理職など、カウンセリングのスキルが求められる業種において、業務を進めるうえで役立つ資格といえます。

 一方、公認心理師は医療や教育などさまざまな分野で職業につながる資格です。

公認心理師と精神保健福祉士の違い

 精神保健福祉士は精神保健福祉士法によって制定されている国家資格です。

 公認心理師は心理学の専門的な知識に基づいて、心理的に悩みを抱えている人を対象にカウンセリングやアドバイスを行います。

 一方、精神保健福祉士はメンタルヘルスに不安のある人や精神疾患を抱えている人などを対象に、社会復帰を目的とした助言や指導などを行います。

▶参考記事:精神保健福祉士ってどんな資格?取得後の就職や職業、給与などを解説

公認心理師の資格を取得するには?

 公認心理師の資格を取得するには、毎年1回実施される公認心理師試験を通過しなければなりません。

 公認心理師試験はマークシート方式で午前と午後のそれぞれ120分で実施され、受験料は28,700円です。[注3]

 試験はこれまで5回開催されていて、第6回は2023年5月14日に実施予定です。公認心理師試験を受験するためにはいくつかの条件が設けられています。

公認心理師の資格を取得するには?

 公認心理師試験を受験するための条件として、厚生労働省『公認心理師のカリキュラム等について』では経過措置を含む6つのパターンを提示しています。

 それぞれのパターンは次のとおりです。[注4]

パターン 資格取得方法
A 4年制大学にて省令で定められた25科目を履修+大学院にて省令で定められた10科目を履修
B 4年制大学にて省令で定められた25科目を履修+公認心理師法で定められた9つの認定施設で2年以上の実務経験
C
  • 4年制大学にて省令で定められた25科目を履修+外国の大学院で心理学を履修
  • 外国の大学で心理学を履修+日本の大学院にて省令で定められた10科目を履修
  • 外国の大学で心理学を履修+公認心理師法で定められた9つの認定施設で2年以上の実務経験
  • 外国の大学で心理学を履修+外国の大学院で心理学を履修
  • 外国の大学院で心理学を履修+外国の心理職資格を有する
D (経過措置) 公認心理師法施行日(2017年9月15日)以前に大学院にて省令で定められた10科目を履修
E (経過措置) 公認心理師法施行日(2017年9月15日)以前に4年制大学にて省令で定められた25科目を
履修+同法の施行後に施行後に大学院にて省令で定められた10科目を履修
F (経過措置) 公認心理師法施行日(2017年9月15日)以前に4年制大学にて省令で定められた25科目を
履修+公認心理師法で定められた9つの認定施設で2年以上の実務経験

 パターンB、C、Fで条件として挙がっている認定施設とは以下のとおりです。(2023年3月時点)
  • 少年鑑別所および刑事施設
  • 一般財団法人愛成会 弘前愛成会病院
  • 裁判所職員総合研修所および家庭裁判所
  • 医療法人社団至空会 メンタルクリニック・ダダ
  • 医療法人社団心劇会 さっぽろ駅前クリニック
  • 学校法人川崎学園 川崎医科大学附属病院
  • 学校法人川崎学園 川崎医科大学総合医療センター
  • 社会福祉法人風と虹 筑後いずみ園
  • 社会福祉法人楡の会

[注3]一般財団法人日本心理研修センター「第6回公認心理師試験 受験の手引」
[注4]厚生労働省「公認心理師試験の受験を検討されている皆さまへ」

公認心理師の資格試験の内容は?

 公認心理師試験は、専門的な知識を問う問題や心理に関する支援についての問題、公認心理師としての職責についての問題などが出題されます。

 たとえば、2022年7月17日に実施された第5回公認心理師試験では、個人情報の保護についてや障害者権利条約についての出題がありました。[注5]

[注5]一般財団法人日本心理研修センター「問題」
 

公認心理師の資格試験は難しい?

 公認心理師試験は2018年9月に初回がスタートして以降、2023年3月時点で合計5回実施されています。
 
 一般財団法人日本心理研修センターは各回の受験者と合格者数、合格率を発表していて、結果は次のとおりです。[注6]

回数 受験者数 合格者数 合格率
第1回 3万5,020 2万7,876 79.6%
第2回 1万6,949 7,864 46.4%
第3回 1万3,629 7,282 53.4%
第4回 2万1,055 1万2,329 58.6%
第5回 3万3,296 1万6,084 48.3%
平均 2万3,990 1万4,287 57.3%

 第5回までの合格者の平均は1万4,287人で合格率平均は57.3%です。

 約半数の人が合格していることになります。

 この合格率を同じく国家資格である精神保健福祉士と比較すると、6%ほど低い結果となっています。

 精神保健福祉士の直近5回の合格者、合格率は以下のとおりです。[注7]

回数 受験者数 合格者数 合格率
第20回 6,992 4,399 62.9%
第21回 6,779 4,251 62.7%
第22回 6,633 4,119 62.1%
第23回 6,165 3,955 64.2%
第24回 6,502 4,267 65.6%
平均 6,614 4,198 63.5%

[注6]一般財団法人日本心理研修センター「公認心理師試験」
[注7]厚生労働省「第20回精神保健福祉士国家試験合格発表」
 

公認心理師の資格を取得するとどんな場所で働ける?

 公認心理師の資格を取得することで、福祉や教育、医療などさまざまな領域で勤務できます。それぞれの領域で担う役割は異なります。

福祉領域

 公認心理師の福祉領域での就業先として挙げられるのが、児童相談所や児童福祉施設です。

 このような施設で、不登校や虐待といった子育てに関わる相談や障がいについての相談に対応します。

 成人を対象とする場合、障がい者の入所施設や相談機関も公認心理師の就業先です。

 就業先では障がい者の心理査定や支援によって、障がい者本人と家族をサポートします。

 また、特別養護老人ホームやほかの高齢者施設、DV被害を受けた女性を支援する団体にも活躍の場はあるでしょう。

教育領域

 公認心理師はスクールカウンセラーとして教育領域で活躍できる可能性があります。

 これまでスクールカウンセラーは臨床心理士が担っていました。

 しかし、2021年度の小中学校の不登校生徒の数は24万4,940人と多いことから、臨床心理士だけでなく、公認心理師もスクールカウンセラーとして不登校やいじめの問題に取り組んでいくことが予想されます。[注8]

 また、自治体による教育相談室や教育センターも公認心理師の勤務先として挙げられます。

[注8]文部科学省「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」

医療領域

 医療の領域における心理臨床は臨床心理士の役目でした。

 しかし、一部の条件を除けば公認心理師だけが診療報酬の加算対象となることから、医療の領域での公認心理師の役割は大きくなっていくことが予想できるでしょう。

 公認心理師が活躍する医療領域として、精神科や小児科といった診療科以外にも、保健所や精神保健福祉センターといった保健機関が挙げられます。

 保健機関では、公務員である精神保健福祉相談員として勤務します。

 精神保健福祉相談員はアルコールをはじめとした依存症の相談やひきこもりの相談やサポートなどに応じる以外にも、心の健康についての啓蒙活動も行います。

産業・労働領域

 公認心理師が産業、労働領域で働くとしたら、企業内のカウンセラーや外部から労働者の心の健康をサポートするEAPが考えられます。

 たとえば、メンタルヘルスに未然に配慮する一次予防、早期に発見・対応する二次予防、復職をサポートする三次予防といった段階に応じて労働者の心のケアに携わります。

 企業カウンセラーやEAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)が考えられます。

 公認心理師が産業や労働の領域を活躍の場として選択することで、企業カウンセラーやEAPの浸透が期待できます。

司法領域

 家庭裁判所や少年院、少年鑑別所といった司法領域も公認心理師の就職先です。

 公認心理師は司法領域では、犯罪被害者や加害者の心のケアや更生のための心理療法などを行います。

公認心理師の給料・年収はどのくらい?

 厚生労働省『公認心理師の活動状況等に関する調査』では2019年度の公認心理師の年収を調査。[注9]

 その結果、300万円以上400万円未満の割合が約21%で最多となっています。

 次いで400万円以上500万が約18%、200万円以上300万円未満が約16%でした。

 ただし、公認心理師は分野(勤務先)や雇用形態、経験年数によっても年収が変動します。

【分野別】公認心理師の年収目安

 『公認心理師の活動状況等に関する調査』によれば、公認心理師の分野別年収で最も割合が多かったのは次のとおりです。[注9]
  • 保健医療分野:300万円以上400万円未満
  • 福祉分野:300万円以上400万円未満
  • 教育分野:300万円以上400万円未満
  • 司法・犯罪:400万以上500万円未満
  • 産業・労働:500万以上600万円未満
  • その他:1,000万円以上
 そのほかの分野には1,000万円を超える年収を得ている公認心理師もいます。

 このような公認心理師師の勤務先は大学や研究所で、多角的な知識と技術が備わっている必要があると考えられるでしょう。

【雇用形態別】公認心理師の年収目安

 公認心理師の雇用形態は一般的に常勤か非常勤の2つです。

 常勤と非常勤を比較すると年収の目安は以下のとおり異なります。[注9]
  • 常勤:300万円以上400万円未満/400万以上500万円未満
  • 非常勤:200万円以上300万円未満
 常勤は300万円以上400万円未満と400万以上500万円未満の割合が、ほぼ同数で最多でした。

 一方、非常勤は200万円以上300万円が最多という結果になっています。

【経験年数別】公認心理師の年収目安

 一般企業では経験年数によって年収が異なる傾向があります。

 公認心理師では実務経験年数10年未満と10年以上で年収を比較すると以下のとおりです。[注9]
  • 10年未満:300万円以上400万円未満
  • 10年以上:400万以上500万円未満
 実務経験が10年未満は300万円以上400万円未満の割合が最多、10年以上は400万以上500万円未満の割合が最多でした。

 このように一般企業同様、公認心理師も経験年数によって年収が変動する傾向にあります。

[注9]厚生労働省「公認心理師の活動状況等に関する調査」

公認心理師は今後活躍の場が広がる

 公認心理師は2017年に施行された公認心理師法で定められた、日本で初めての心理に関する国家資格です。

 公認心理師試験は2018年に第1回が実施されて以降、毎年実施されていてどんどん公認心理師が誕生しています。

 公認心理師試験が活躍する領域は福祉、教育、医療、産業・労働、司法などが挙げられます。

 今後、公認心理師についての認識が浸透することで、さらなる活躍の場が広がるでしょう。

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