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精神保健福祉士ってどんな資格?取得後の就職や職業、給与などを解説
  • 2023.07.07

 厚生労働省の発表によれば、精神疾患を抱えている人の数は2017年時点で外来・入院あわせて約419万人とされています。[注1]

 この数は年々増加傾向にあることから、今後は精神疾患を抱えた人を専門的な知識に基づいてサポートする人材が求められるでしょう。

 このような人材として注目されているのが精神保健福祉士です。

 この記事では精神保健福祉士の資格内容や資格取得後の就職先や給与等について解説します。

 [注1]厚生労働省「第13回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会 参考資料」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf

目次

精神保健福祉士ってどんな資格?

 精神保健福祉士とは精神的な障がいを抱えている人からの相談に応じて、生活支援や社会参加のサポートを行います。

 精神保健福祉士は医療、保健、福祉といった幅広い分野で活躍しています。

精神保健福祉士とは?資格について簡単に紹介

 精神保健福祉士は1997年の精神保健福祉士法の施行と同時に誕生した国家資格です。[注2]

 精神保健福祉士の仕事内容は勤務先によって異なりますが、例えば病院であれば入院している患者さんの相談に乗り、退院後の生活を送るためのサポートを行います。

 また、患者さんだけではなく、その家族や関係機関と連絡を取り合い、患者さんの社会復帰を支援します。
 
 一方、精神保健福祉センターや保健所に勤務した場合は、地域住民に心の健康について啓蒙していく役割も担います。
 
 

精神保健福祉士と社会福祉士の違い

 精神保健福祉士と同じくソーシャルワーカーとして広く知られているのが、社会福祉士です。

 精神保健福祉士は精神的な障がいを抱えている人のサポートをするのに対して、社会福祉士は心身の障がいに関わらず、低所得や家庭事情などによって日々の暮らしに影響が出てしまっている人をサポートします。

 社会福祉士は、高齢者や障がい者向けの介護施設や児童相談所をはじめとした福祉施設などで活躍しています。

 精神保健福祉士と同様、社会福祉士も社会福祉士及び介護福祉士法で定められた国家資格です。

精神保健福祉士と臨床心理士・公認心理師との違い

 まずはじめに精神保健福祉士と臨床心理士との違いは、国家資格かどうかという点と仕事内容にあります。

 精神保健福祉士は国家資格であるのに対して、臨床心理士は公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定した民間資格です。

 さらに、心理の専門職として公認心理師も国家資格化されました。

 また、精神保健福祉士は相談者の就労や必要な行政手続きをサポートするのに対して、臨床心理士・公認心理師は心理検査やカウンセリング等の臨床心理技法を用いて、相談者の心の悩みを解決します。

精神保健福祉士の資格を取得するには?

 精神保健福祉士の資格を取得するには、年に1回実施される精神保健福祉士国家試験に合格する必要があります。

 精神保健福祉士国家試験は2日間にわたって実施され、受験料は24,140円です。[注3]
 

精神保健福祉士の資格試験を受けるためには?

 精神保健福祉士国家試験を受けるためには、受験要件を満たす必要があります。

 受験要件は以下のようなパターンがあり、大学、短期大学を経由した場合の要件は次のとおりです。

パターン 資格取得方法
1 4年制保健福祉系大学等で指定科目を履修
2 3年制保健福祉系短期大学等で指定科目を履修+相談援助実務を1年経験
3 2年制保健福祉系短期大学等で指定科目を履修+相談援助実務を2年経験
4 4年制保健福祉系大学等で基礎科目を履修+短期養成施設等で6ヶ月以上勤務
5 3年制保健福祉系短期大学等で基礎科目を履修+相談援助実務を1年経験+短期養成施設等で6ヶ月以上勤務
6 2年制保健福祉系短期大学等で指定科目を履修+相談援助実務を2年経験+短期養成施設等で6ヶ月以上勤務
7 4年制一般大学等+一般養成施設等で1年以上勤務
8 3年制一般短期大学等+相談援助実務を1年経験+一般養成施設等で1年以上勤務
9 2年制一般短期大学等+相談援助実務を2年経験+一般養成施設等で1年以上勤務

 4年制保健福祉系大学、3年制保健福祉系短期大学、2年制保健福祉系短期大学で指定科目を履修した場合、最短4年で精神保健福祉士の資格取得が可能です。
 

精神保健福祉士の資格試験の内容は?

 年に1回実施される精神保健福祉士国家試験は、以下の17科目に沿った問題が出題されます。

 ・人体の構造と機能及び疾病
 ・心理学理論と心理的支援
 ・社会理論と社会システム
 ・現代社会と福祉
 ・地域福祉の理論と方法
 ・社会保障
 ・低所得者に対する支援と生活保護制度
 ・福祉行財政と福祉計画
 ・保健医療サービス
 ・権利擁護と成年後見制度
 ・障害者に対する支援と障害者自立支援制度
 ・精神疾患とその治療
 ・精神保健の課題と支援
 ・精神保健福祉相談援助の基盤
 ・精神保健福祉の理論と相談援助の展開
 ・精神保健福祉に関する制度とサービス
 ・精神障害者の生活支援システム

 例えば、2021年度に実施された第24回精神保健福祉士国家試験では、「人体の構造と機能及び疾病」として、感染症やリハビリテーションについての問題が出題されています。[注4]
 

精神保健福祉士の資格試験の合格率はどのくらい?

 精神保健福祉士国家試験は1999年に第1回がスタートしてから、これまで25回実施されています。

 直近5回の合格率は次のとおりです。[注5]

回数 受験者数 合格者数 合格率
第20回 6,992 4,399 62.91%
第21回 6,779 4,251 62.71%
第22回 6,633 4,119 62.10%
第23回 6,165 3,955 64.15%
第24回 6,502 4,267 65.63%
平均 6,614 4,198 63.50%

 第20回から毎年60%ほどの合格率となっています。
 
 同じく国家試験である社会福祉士国家試験の直近の合格率が約30%であることと比較すると、精神保健福祉士の合格率は高いといえるでしょう。

 社会福祉士の合格率は次のとおりです。[注6]
 

回数 受験者数 合格者数 合格率
第30回 43,937 13,288 30.24%
第31回 41,639 12,456 29.91%
第32回 39,629 11,612 29.30%
第33回 35,287 10,333 29.28%
第34回 34,563 10,742 31.08%
平均 39,011 11,686 29.96%

精神保健福祉士の資格取得後はどんな仕事に就ける?

 精神保健福祉士の資格を取得することで、医療・福祉・司法系などさまざまな領域で活躍できます。

医療系

 精神保健福祉士は精神科病院や心療内科の診療所、医療機関に併設されたデイケアにて勤務します。

 具体的な業務は勤務先によって異なりますが、いずれも精神障がいを抱えた患者さんの生活をサポートします。

 また、主治医や看護師、作業療法士など他の職種と連携してチーム医療を提供することも重要です。

福祉系

 精神保健福祉士が活躍する福祉領域は、障がい者支援施設や通所施設、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設といった介護施設などです。

 障がい者支援施設や通所施設では、医療費をはじめとしたアドバイスを行うだけでなく、他の機関と連携して適切な福祉サービスを利用できるように図ります。

 また、介護施設では高齢者のケアや相談に乗ります。

教育系

 精神保健福祉士は教育領域ではスクールソーシャルワーカーとして、生徒はもちろん、その家族のケアを担います。

 文部科学省はスクールソーシャルワーカーの配置充実を掲げていることから、今後は教育領域における精神保健福祉士のニーズの高まりが予想されます。[注7]
 

司法系

 2003年に制定された心神喪失者等医療観察法によって、精神保健福祉士が司法領域で活躍する機会が増えています。

 具体的には社会復帰調整官や精神保健参与員として、精神保健福祉の観点からさまざまな意見やサポートを行います。

 また、矯正施設でも社会復帰調整官等精神保健福祉士が配置されるケースがあります。

精神保健福祉士の気になる年収は?

 『精神保健福祉士就労状況調査』によれば、2019年の精神保健福祉士の平均年収は404万円でした。

 前回行われた同調査の平均年収347万円と比較すると、57万円上昇しています。[注8]

【施設・事業所別】精神保健福祉士の年収目安

 精神保健福祉士の年収は勤めている施設や事業所によって異なります。

 「精神保健福祉士就労状況調査実施結果報告書」によれば、主な施設・事業所別の精神保健福祉士の平均年収は以下のとおりです。[注8]

 ・高齢者福祉関係:394万円
 ・障がい者福祉関係:386万円
 ・児童・母子福祉関係:416万円
 ・生活保護関係:455万円
 ・地域福祉関係:431万円
 ・生活困窮者自立支援関係:351万円
 ・医療関係:396万円
 ・学校教育関係:315万円
 ・就業支援関係:384万円
 ・司法関係:521万円
 ・行政機関:485万円
 ・その他:373万円

 矯正施設をはじめとした司法関係の平均年収が最多で521万円となっています。

 一方、次の施設・事業所は精神保健福祉士の平均年収を下回る結果でした。
 
 ・高齢者福祉関係
 ・障がい者福祉関係
 ・生活困窮者自立支援関係
 ・医療関係
 ・学校教育関係
 ・就業支援関係
 ・その他
 

【雇用形態別】精神保健福祉士の年収目安

 精神保健福祉士の雇用形態には、正規職員、契約職員、パートタイム職員、派遣職員があります。

 「精神保健福祉士就労状況調査実施結果報告書」によれば、それぞれの割合は次のとおりです。[注8]

 ・正規職員:80.6%
 ・契約職員:9.2%
 ・パートタイム職員:9.5%
 ・派遣職員:0.2%
 
 雇用形態によっても、平均年収は変わります。雇用形態別の年収の分布は次のとおりです。

  103万円未満 103万円~130万円未満 130万円~150万円未満 150万円~200万円未満 200万円~300万円未満 300万円~400万円未満 400万円~500万円未満 500万円~600万円未満 600万円~
正規職員 0.8% 0.1% 0.1% 0.5% 8.5% 26.3% 21.9% 12.1% 15.0%
契約職員 4.8% 1.5% 0.8% 4.8% 28.9% 22.7% 7.9% 2.5% 2.0%
パートタイム職員 21.4% 7.6% 4.3% 7.9% 18.0% 5.7% 2.6% 0.9% 0.3%
派遣職員 10.9% 0.0% 0.0% 2.2% 19.6% 8.7% 2.2% 0.0% 4.3%

 正規職員は精神保健福祉士全体の平均年収である404万円を上回る割合が、49%にも達しています。

 一方、契約職員は200万円~300万円未満が最多の28.9%で、404万円を上回る層の割合は12.4%に留まっています。

【性別・年齢別】精神保健福祉士の年収目安

 精神保健福祉士の年収は年齢や性別によっても変わってきます。

 まず、精神保健福祉士の年齢比、男女比は以下のとおりです。[注8]
 
 ・30歳未満:10.9%
 ・30歳以上50歳未満:50.0%
 ・50歳以上60歳未満:19.7%
 ・60歳以上:18.8%
 ・男性:28.3%
 ・女性:71.5%
 
 また、性別、年齢別の平均年収は次のとおりです。

  20代 30代 40代 50代 60代以上 平均
男性 325万円 420万円 492万円 541万円 407万円 437万円
女性 311万円 351万円 399万円 451万円 321万円 366.6万円

 男女ともに50代の平均年収が最多となっていて、どちらも精神保健福祉士全体の平均年収を上回っています。

 また、男性全体の平均年収は、全体の平均年収を上回っているの対して、女性全体の平均年収は全体の平均年収を下回っています。
 

精神保健福祉士はさまざま領域で活躍できる資格

 精神保健福祉士は1997年の精神保健福祉士法によって誕生した国家資格です。

 精神保健福祉士国家試験は年に1回実施され、2023年3月時点で24回行われています。

 試験の近年の合格率は60%ほどです。
 
 精神保健福祉士は医療、福祉、教育、司法など幅広い領域で活躍できます。

 いずれの領域でも相談者の生活や社会参加をサポートする、やりがいのある仕事といえます。

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