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精神科で勤務する作業療法士の仕事内容を紹介
  • 2024.11.20

 作業療法士の資格を取得すれば、病院や福祉の現場など理学療法士とほぼ同じ領域で活躍できます。さらに作業療法士は、理学療法士とは異なり精神科の病院やクリニックに在籍し、精神疾患をもつ患者さんに対応するという選択肢もあります。
 精神科の作業療法士は、患者さんが日常生活に戻るための助言やリハビリなどを担当します。この記事では、精神科で働く作業療法士の特徴や仕事内容について紹介します。

目次

精神科で働く作業療法士の仕事内容は?

 精神科の作業療法士は、精神疾患をもつ患者さんに対してリハビリを行い、回復を促す仕事を担当します。精神疾患には多くの症状があるため、個々の症状に応じたきめ細やかなケアが求められます。

 まずは、精神科で働く作業療法士の仕事内容を紹介します。

創作活動やレクリエーションを通したリハビリ

 精神科の病院に入院、通院している患者さんの症状にはさまざまなものがあります。例えば、統合失調症やうつ病、躁鬱病などに悩む患者さんは多いものです。ほかに、認知症やてんかんの患者さんも入院、通院しています。

 作業療法士はこういった患者さんに対し、手芸や工芸などの創作活動、レクリエーション、生活技能訓練といったリハビリのケアを行います。

 創作活動では編み物や陶芸、書道や折り紙などを取り入れ、患者の集中力を鍛えていきます。ときには、心身のストレス発散のために園芸療法を行うこともあります。
 体を動かすレクリエーションも精神科の患者さんに良い効果を及ぼします。作業療法士が実施するレクリエーションには、体操やコーラス、集団でのゲーム、カラオケなどがあります。
 生活技能訓練には買い物や外出、調理などの支援活動、グループワークなどの集団活動があります。どの活動も、患者さんにとっていい気晴らしやコミュニケーションの機会になります。

子どもの発達のサポート

 精神科には、児童思春期を専門に扱っている施設もあります。子ども向けの精神科施設には、心に負担を抱えた幼児や児童、発達に遅れのある子どもがいます。
 児童思春期の精神科施設では、作業療法士は遊びを通したリハビリを中心に対応します。子どものサポートをするときのポイントは、年齢や発達段階、症状に合わせたケアやサポートを行うことです。

 子どもたちが楽しみながら自分らしく過ごせるよう、きめ細やかなケアをするのが、児童思春期の精神科施設に在籍する作業療法士の役割です。

復職や引きこもりの支援

 精神科の作業療法士は、精神疾患を機に休職をしている方の復職支援、引きこもりの復帰支援も行います。復職や引きこもりの支援では、身体の機能回復に加え、精神的なサポートも欠かせません。

 休職中の方には休職に至った経緯や職務の分析、作業能力の評価などの対処をします。せっかく復職してもまた休職することになっては余計に負担がかかってしまうため、心身を健康な状態に導くことが肝心です。

 引きこもりの支援は病院やクリニック内だけでなく、患者さんの自宅を訪れて行うこともあります。引きこもりの方とは、最初のうちは会話がうまくいかないかもしれません。精神科の作業療法士には、腰を据えて対応する辛抱強さが求められます。

依存症患者のケア

 精神科の病院では、薬物依存症やアルコール依存症の患者さんに対するケアも行われます。
 依存症の患者さんには運動や創作活動などの作業療法が効果的です。ときには、依存症に関する勉強会を開催することもあります。

 依存症からの回復は簡単なものではないため、医師や薬剤師、臨床心理士、管理栄養士などとチームを組んでケアを行うのが一般的です。ほかのスタッフと連携しながら、質の高いケアを提供することが重要です。

精神科の作業療法士はどんな施設で働くの?

 精神科の作業療法士は、精神疾患をきっかけに日常生活に支障をきたした患者さんのケアをします。職場は精神科の病院やメンタルクリニックのほか、精神保健福祉センター、精神障害者支援センターなどさまざまです。

 ここからは、精神科の作業療法士が在籍する施設の種類について紹介します。

精神科病院

 精神科の作業療法士の多くは、精神科病院に在籍します。精神科病院に入院または通院している患者さんには、統合失調症やうつ病、躁うつ病、依存症、認知症、パーソナリティ障害、てんかんなどの症状があります。作業療法士は、精神的な症状の負担の緩和や、作業プログラムによるリハビリなどを担当します。

 精神科病院の患者さんは症状によって自信や気力を失っていることがあります。重度の症状があり、自発的な行動が難しいという患者さんもいることでしょう。作業療法士はこういった患者さんに対するケアも行います。

精神保健福祉センター

 精神科の作業療法士には、精神保健福祉センターで働くという選択肢もあります。
 精神保健福祉センターとは、精神的な健康を改善または保持するための施設で、地域ごとに拠点をもっています。

 精神保健福祉センターに勤める作業療法士は、地域住民や福祉職の方に向けて、精神疾患に関する研修や講演、技術指導などを行います。また、地域の方の心の健康に関する相談窓口として働くこともあります。

精神障害者社会復帰支援センター

 精神科の作業療法士の職場には、精神障害者社会復帰支援センターまたは精神障害者社会復帰促進センターがあります。
 精神障害者社会復帰支援センターや精神障害者社会復帰促進センターは、精神障害が原因で家庭での生活に支障がある方のケアを行う施設です。施設内には居室や訓練ができる設備があり、作業療法士は日々のケアやサポートを通じて社会復帰を促進します。

 ただし精神障害者社会復帰支援センターや精神障害者社会復帰促進センターの作業療法士の定員はかなり少ないものです。

精神科で働く作業療法士の特徴は?他の職場との違いを紹介

 作業療法士の職場には総合病院やクリニック、リハビリテーションセンターや老人保健施設などがあります。こういった職場と精神科には、いくつかの違いがあります。

 ここからは、精神科で働く作業療法士と、ほかの職場で働く作業療法士の違いを紹介します。

精神科で働く作業療法士のやりがい

 作業療法士の仕事は、作業療法を通じて患者さんの支援やケアをすることです。作業療法には患者さんの身体機能の向上や生活技能の向上など多くの効果が期待できます。

 たとえ精神科でも一般病院であっても、困った人をサポートできるというやりがいは共通しています。精神科の場合は、より精神的なケアやサポートを行えるため、高いモチベーションをもって仕事を続けている方も多いものです。

 精神科には、対人関係に敏感な患者さんや心を閉ざしがちな患者さん、自信をなくしている患者さんがたくさんいます。患者さんの心身を回復させ社会復帰を促すためには、じっくりと時間をかけて信頼関係を築くことが重要です。

 丁寧な支援を続けることによって患者さんが自信を取り戻し、積極的に新たなことに挑戦できるようになるのは、作業療法士によって最大のやりがいといえます。

精神科で働く作業療法士の給料

 精神科で働く作業療法士の給料は、職場の規定や勤務時間によって異なりますが、作業療法士としての平均程度かやや高い場合もあります。

 厚生労働省が調査している「賃金構造基本統計調査」では、作業療法士の平均月給は約26万円でした。求人情報誌に掲載される精神科の作業療法士の給与額相場は、おおよそ月給約25万円前後であるといえるでしょう。地域によっては、月収が30万円以上になるケースもあります。
 精神科で働いた場合、作業療法士の平均に近い給与または平均以上の給与を受け取れる可能性は決して低くはありません。

 ▶参照:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」

精神科で働く作業療法士の休日

 精神科で作業療法士として働くにあたって、労働条件が気になる方もいると思います。
 ほとんどの精神科病院やクリニックなどは、日曜が固定の休日となっています。また、土曜日の午後も休みになりやすいのが特徴的です。
 日曜日に固定で休むことができれば、プライベートの時間を十分に確保することが可能となります。休日に予定を立てて動きたい方には、精神科での勤務が適しています。

 また、休日を利用して作業療法士の研修や講習会に参加する方もいます。普段の業務とスキルアップを両立したい方にも、精神科での勤務はおすすめです。

精神科の作業療法士に向いている人は?

 作業療法士の資格取得をめざしているものの、自分がどんな職場に向いているのか判断できず悩んでいるという方もいるかもしれません。ここからは、精神科の作業療法士に向いている人の特徴について紹介します。

精神的なケアを重視したい人

 精神科の作業療法士は、精神的な病気からの復帰をじっくりとサポートしたい人に適した職業です。
 精神科の作業療法士には、患者さんの心を丁寧にケアする能力が求められます。身体的な症状は短期間で回復するケースも多いものですが、精神的な症状の回復にはどうしても長い時間がかかってしまいます。
 長期的に患者の回復に向き合いたいと感じる方には、精神科という職場が向いています。

引きこもりなどの社会問題に取り組みたい人

 ストレス社会が叫ばれる現代においては、何らかの理由で社会復帰が難しいという患者さんは多いものです。特に、引きこもりになってしまう患者さんの多さは社会問題として注目されています。
 仕事への復帰が難しい人、自宅に引きこもりがちになってしまった人のケアも、精神科の作業療法士の大切な仕事です。
 幅広い視点をもって困っている人を支援したいと感じている方には、精神科の作業療法士という仕事が向いています。

コミュニケーション能力が高い人

 精神科の作業療法士には高いコミュニケーション力が求められます。

 身体的な症状とは異なり、精神的な症状は目に見えないものです。目の前の患者さんの話をじっくりと聞き、専門的な視点から回復へと導くことが効果的なケアにつながります。

 精神科の患者さんは比較的話が長くなる傾向にあります。精神的な症状によって思考が止まらなくなったり、自分が何を話しているのかをうまくまとめられなかったりするケースがあるためです。
 こういった患者さんの話を優しく受け止めながら作業療法を行えば、スムーズな回復を促すことができます。

精神科の現場では高いスキルをもつ作業療法士が求められている!

 精神科の病院やクリニック、支援センターに在籍する作業療法士は、精神的な症状をもつ患者さんをケアするスペシャリストです。引きこもりなど精神的な症状が社会問題化する時代だからこそ、医療の現場では高いスキルをもつ作業療法士が求められています。
 自身の知識やスキルを活かして働きたいとお考えなら、ぜひ精神科病院や支援センターへの就職を視野に入れてみましょう。

 これから作業療法士をめざそうと考えている方には、専門的な知識や技術を学べる大学への進学がおすすめです。関西福祉科学大学のリハビリテーション学科には、作業療法学の専攻分野があります。将来的に現場で活躍するためにも、高いスキルを身につけられる大学を選びましょう。

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