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理学療法士ではなく作業療法士をめざした理由
  • 2024.10.18

 リハビリテーション系の進路を考える際に「作業療法士」と「理学療法士」のどちらの資格をめざすべきか悩まれる方は多いでしょう。いずれの仕事も自力での運動や動作が困難な患者さんに対してリハビリテーションを施すという点では共通です。

 一方で、理学療法士の仕事は身体の基本的動作の回復を目的とするのに対し、作業療法士は日常生活をスムーズに行うための応用動作の再獲得をめざすといった違いがあります。また、作業療法士は身体の疾患を持つ患者さんだけではなく精神疾患を抱えた患者さんのリハビリテーションに携わることも大きな特徴です。

 本記事ではリハビリテーションの資格である作業療法士の仕事について解説していきます。作業療法士と理学療法士の違いのほか、作業療法士が向いている方の特徴も紹介していますので、リハビリテーション科の進路でお悩みの方はぜひ参考にしてください。

作業療法士と理学療法士の違いは?

 作業療法士と理学療法士は同じリハビリテーション科の職種であっても担当する領域が異なります。自身が希望する仕事内容や、将来どのように活躍していきたいかを考え、どちらの資格をめざすべきか考えてみましょう。ここでは作業療法士と理学療法士の違いを解説します。

必要な資格の違い

 初めに知っておくべきことは資格の違いです。作業療法士または理学療法士として仕事をするためには、それぞれに対応する国家資格(免許)を取得しなければなりません。作業療法士として働くためには「作業療法士免許」、理学療法士として働くためには「理学療法士免許」が必要です。

 なお、いずれの資格を取得する場合でも法律により所定の学校や施設で3年以上(既に作業療法士もしくは理学療法士を取得している場合は2年間)の専門教育を受けることが義務付けられています。たとえ知識があったとしても、所定期間の専門教育を修了していない場合は国家試験の受験資格が得られません。

 作業療法士と理学療法士はリハビリテーション科の中でも担当する領域が異なるため、当然ながら患者さんに提供する治療の種類も異なります。めざすべき資格を決めるためにも、自分がどのような仕事に従事したいか、どのような職場で働きたいか、将来どのように活躍したいかをしっかり考えることが大切です。

仕事内容の違い

 続いて作業療法士と理学療法士の仕事の違いについて解説します。両者の仕事内容を簡潔に述べると以下の通りです。

  • 理学療法士
    「歩く」「起き上がる」など基本的運動能力の回復をサポートする

  • 作業療法士
    応用動作の再獲得や精神面のケアを通じて日常生活への復帰をサポートする

 まず一般的なリハビリテーションのイメージに近い理学療法士の仕事から紹介します。

 理学療法士が担うのは身体に障がいのある方に対する「基本的運動能力」の回復を目的としたトレーニングです。基本的な運動とは「座る」「立つ」「歩く」「起き上がる」「寝返る」といった人間の大きな動作を指します。

 怪我や病気、加齢などの理由により身体が不自由になった人、もしくは生まれつき身体に障がいのある方に対して、基本的な運動能力の回復をサポートすることが理学療法士の仕事です。

 一方、作業療法士は基本的動作の延長にある「応用的動作」の再獲得を担います。応用的動作とは「食事をする」「入浴をする」「料理を作る」といった日常生活全般の作業のことです。

 また、作業療法士ならではの特徴として、その職域が精神科の領域にも及ぶことが挙げられます。身体の障害だけでなく、精神的な障害によって日常生活の動作が困難となった人に対するリハビリテーションも作業療法士が担う職務です。

 作業療法士の仕事の本質は患者さんの「からだ」と「こころ」の両方をケアすることにあります。リハビリテーションを通じて患者さんが活き活きと自分らしい人生を送れるようサポートをすることが作業療法士に求められる役割です。

働く場所の違い

 作業療法士と理学療法士では働く場所にも違いがあります。どちらの職種も主な就職先となるのは病院やリハビリテーション施設です。しかし、それ以外にもそれぞれの職種の特徴を活かした職場への就職をめざすこともできます。

 理学療法士は身体の動きや内部構造を熟知したエキスパートです。その知見を活かし、医療関連だけでなくスポーツ関連の職種に進む人もいます。

 作業療法士の場合はより生活に密着したリハビリテーションを担うため、医療機関だけでなく介護施設や児童福祉施設など活躍の場は多岐に渡ります。また、作業療法士は障害者の社会復帰に関するエキスパートでもあるため、地域の職業センターや障害者の就労支援を行うNPO団体等での活躍も可能です。

作業療法士と理学療法士の共通点は?

 作業療法士と理学療法士はどちらもリハビリテーションを担当する職種であり、共通点も多く見られます。患者さんの豊かな生活をサポートしたい、患者さんと喜びを分かち合いたいと考えている人であればどちらの職種でもやりがいを感じられるでしょう。ここでは作業療法士と理学療法士の共通点を解説します。

ともに身体の機能回復をサポートする仕事

 作業療法士と理学療法士の仕事は、どちらも身体の運動機能の回復をサポートすることを目的とした仕事です。それぞれアプローチは異なるものの、リハビリテーションを通して日常生活に必要な運動機能の回復を図るという点では共通しています。どちらの仕事に就くにしても、患者さんに寄り添い、思いやりをもってサポートする気持ちが大切です。

やりがいや魅力

 リハビリテーション科の仕事のやりがいは、なんといっても患者さんと喜びを分かち合えることにあります。困難を乗り越えて喜ぶ患者さんの様子を見ることは、リハビリテーションの仕事に従事する人にとって何にも替えがたい瞬間です。患者さんに寄り添い、ともに目標を達成していく過程を体験できることは、作業療法士、理学療法士双方に共通する魅力と言えます。

 作業療法士と理学療法士の仕事は、患者さんに対して単にリハビリメニューを提供するだけではありません。患者さんのなかには体の不自由からくるストレスで精神的に弱気になっている人もいます。そのような患者さんに対して目標を達成できるようサポートし、困難を乗り越えて生きる気力や楽しさを思い出してもらうこともリハビリテーション職の重要な役割です。

国家資格の難易度

 資格取得試験の難易度に関しては、作業療法士と理学療法士で大きな差は見られません。試験内容となる科目も大部分が共通しており、毎年の平均合格率はどちらも80%前後で推移しています。新卒受験者に限れば90%近い合格率が記録されているため、専門の教育機関でしっかりと学べば合格は決して難しくないでしょう。[注1]

【作業療法士の試験科目】
 解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要及び作業療法

【理学療法士の試験科目】
 解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要及び理学療法

 なお、作業療法士と理学療法士の試験はいずれも年に1回、毎年2月に実施されます。受験資格を持つのは文部科学省が指定した学校、もしくは都道府県知事の指定した養成施設において3年以上の専門課程を修了した者です。

[注1]厚生労働省「第59回理学療法士国家試験及び第59回作業療法士国家試験の合格発表について」

仕事の将来性

 作業療法士と理学療法士は、どちらの職種も今後より需要が高まっていくことが想定されています。その理由は日本における少子高齢化です。今後、国民の3人に1人が高齢者となる日本では、介護系の職種と同様にリハビリテーション系の職種が活躍する機会も広がっていくでしょう。

毎月の給与額と賞与額

 作業療法士と理学療法士では毎月の給与額や賞与額にも大きな違いは見られません。病院の規模や地域による差こそあるものの、医療機関での就業に限定すれば作業療法士と理学療法士では同等の年収が得られます。

 なお、その他リハビリテーション系職種である言語聴覚士や視能訓練士も年間収入に差はありません。これらリハビリテーション系4職種における全年齢の平均年収は約432万円です。[注2]

[注2]job tag(厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)

理学療法士ではなく作業療法士を選んだ理由は?

 作業療法士をめざした理由は人それぞれですが、共通しているのは「人の役に立ちたい」という気持ちです。決して楽な仕事ではないため、作業療法士を志す際は志望理由を明確にして自身もモチベーションを保つことが大切です。ここでは作業療法士をめざした理由として代表的なものを紹介します。

より社会復帰を意識したサポートを行いたかった

 作業療法士を選ぶ理由として多く聞かれるのは、患者さんの社会復帰をサポートしたいという気持ちです。作業療法士の役割は、身体が不自由な患者さんに動作練習や精神ケアを施し、社会復帰まで導くことにあります。つまり、作業療法士の仕事は患者さんの退院後の人生を左右すると言っても過言ではありません。
 担当患者に対して大きな責任を負う作業療法士ですが、それだけに仕事に対するやりがいも強く感じられます。「患者さんのサポートがしたい」「患者さんと二人三脚で目標を達成したい」「患者さんの人生を一緒に考えたい」といった気持ちを持っている人であれば、作業療法士の仕事に大きな魅力を感じられるでしょう。

作業療法士に支えられた経験から自分もめざそうと思った

 自身が作業療法士に支えられた経験から自分も作業療法士を志すようになった、という理由もよく聞かれます。
 作業療法士の仕事は一般的にあまり知られておらず、リハビリテーション系の資格としても理学療法士の陰に隠れがちです。しかし、患者さんに寄り添い共に社会復帰をめざすという作業療法士のやりがいや魅力は理学療法士にも劣りません。
 そのため、自身や家族が怪我や病気になったことをきっかけとして、作業療法士の仕事に興味を持つようになった人も多いようです。以前に作業療法士のお世話になった経験があるのであれば、その時に感じた憧れや感謝の気持ちが仕事を続けるモチベーションにもなるでしょう。

精神科領域にも関わる仕事に興味を持った

 リハビリテーション系の職種でありながら精神科領域にも関わる点に興味を惹かれて作業療法士を志す人も見られます。作業療法士の主な職務領域は身体障害、精神障害、老年期障害、発達障害の4つです。体に障がいのある患者さんだけではなく、発達障害や認知症といった精神疾患を抱えた患者さんのリハビリも作業療法士が担います。
 そのため、作業療法士が必要とされる現場は医療機関に限りません。自身の興味やキャリアの方向性に合わせて、様々な現場で自身のスキルを磨いていけることも作業療法士の魅力です。

作業療法士と理学療法士のどちらをめざすべき?

 作業療法士と理学療法士はどちらも人々の役に立つ魅力的な仕事であり、自分がどちらの道に進むか悩んでしまう人もいるでしょう。ここでは自分が作業療法士と理学療法士のどちらに向いているか判断するポイントを解説します。

理学療法士は学ぶことが好きな人におすすめ

 理学療法士に向いているのは新しい知識やスキルを学ぶことが好きな人です。リハビリテーションに関する医学的な知見は常に進歩しており、今までの常識がこれからも通用するとは限りません。患者さんに適切なリハビリテーションを施すためにも、理学療法士には常に自身の知見を広げる姿勢が求められます。
 自分をアップデートすることが好きな人や、勉強自体が苦にならない人は理学療法士の適性が高いと言えるでしょう。他にも、理学療法士には患者さんの異変にいち早く気付く洞察力や、根気強く患者さんと向き合う忍耐力などが求められます。

作業療法士は人に対する好奇心が強い人におすすめ

 作業療法士に向いているのは人に対する好奇心が強い人です。作業療法士は日常生活への復帰を目的としたリハビリテーションを施しますが、患者さんごとにライフスタイルや趣味嗜好は異なります。患者さん一人ひとりに適切なリハビリテーションを施すためには、作業療法士が患者さんに対する理解を深めなければなりません。
 そのため、人の話を聞くこと好きな人や、相手に臆せずコミュニケーションが取れる人は作業療法士の資質が高いと言えるでしょう。そのほか、相手の気持ちに寄り添う思いやりの精神や、常識にとらわれない自由な発想力などが作業療法士に求められる資質です。

作業療法士はリハビリテーションを通して患者さんに並走できる仕事

 作業療法士は、身体や精神に障害を負った患者さんに寄り添い、リハビリテーションを通じてより豊かな人生を過ごすためのサポートをする仕事です。患者さんと一緒に目標へ向かっていくことで、自分が「誰かの生きる力」になれていることを実感できます。大きな責任を伴う仕事ではありますが、それに見合ったやりがいや魅力を感じることができるでしょう。

 関西福祉科大学では作業療法士の資格取得を目的としたリハビリテーション学科作業療法士学専攻のコースを用意しています。同じ目標を志す仲間と共に、関西福祉科大学で作業療法士をめざしましょう。

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