心理学を活かせる職業や給与について
  • 2025.02.13

 大学で心理学を学ぶと、将来どのような仕事に活かせるのでしょうか。心理学というと、卒業後はカウンセラーや公認心理師など、医療や福祉に携わるイメージがあるかもしれません。心理学を仕事に活かせる職場はほかにもあります。
 たとえば、関西福祉科学大学の心理科学科の場合、卒業生の62.3%が一般企業、6.5%が公務員に就職しています。

 本記事では、心理学を活かせる職業や職場、給与の目安を紹介します。

目次

心理学を活かせる職業7選!

 心理学は心のメカニズムを科学的に分析し、治療や健康維持のための手段を考える学問です。AIの発展により、将来多くの仕事がAIに代替されるといわれる中で、人間の心に着目する心理学の重要性はますます高まっています。

 心理学のノウハウを活かせる職業は、福祉、医療・健康、産業、司法、教育など、さまざまな領域にまたがっています。とくに福祉や医療・健康に携わる職業では、心理学を学んだ経験を自分の強みとしてアピールすることが可能です。心理学を活かせる職業を8つ紹介します。

精神科医

 精神科医は本来、心理学部ではなく医学部に入り、医師免許を取得する必要があります。また、精神科医の多くは心の病気の診断と処方が主な業務となるため、カウンセリングは行いません。

 しかし、ここで心理学の知識を持っていると、診察に加えてカウンセリングも行える精神科医を目指すことができます。

精神保健福祉士

 精神保健福祉士は、精神的な障がいを抱えた人をケアし、社会参加に向けてサポートするための職業です。主な勤務先として、病院、保健所、社会復帰促進センターなどが挙げられます。

 精神保健福祉士になるには、大学の心理学部などで精神保健福祉士の国家資格を取得する必要があります。精神保健福祉士の給与の目安は300万円~400万円前後とされています。

スクールカウンセラー

 スクールカウンセラーは、児童や生徒、保護者、教職員などの心のケアを担当する職業です。いじめ問題の深刻化や、不登校児童の増加などの社会問題を受け、全国の小・中・高校でスクールカウンセラーの配備が進んでいます。

 スクールカウンセラーの業務は、面接(相談面接)が中心です。児童や生徒、保護者、教職員のカウンセリングだけでなく、臨床心理学的な観点からアドバイスする「コンサルテーション」が求められることもあります。

 他の教職員と違い、スクールカウンセラーは非常勤講師として採用されることが一般的です。スクールカウンセラーの給与の目安は300万円~400万円前後とされています。

産業カウンセラー

 産業カウンセラーは、民間企業で働く人の心のケアを担当する職業です。仕事の悩みや対人関係のストレスなど、さまざまなメンタルヘルスの不調に寄り添い、心の健康を取り戻すためのアドバイスを行います。

 産業カウンセラーの年収は、中小企業で働く場合は200万円~400万円前後、大企業で働く場合は500万円以上が目安となります。

音楽療法士

 音楽療法士は、音楽の力でメンタルヘルスの不調を改善したり、リハビリテーションを行ったりする職業です。音楽療法士は民間資格のひとつで、ピアノ実技や音楽理論などの音楽試験も行われます。

 音楽療法士の主な勤務先は、病院、学校、福祉施設などです。音楽療法士の給与の目安は300万円前後とされています。

家庭裁判所調査官

 家庭裁判所調査官(家裁調査官)は、全国各地に設置された家庭裁判所に所属し、家庭内の紛争や少年事件の調査を担当する職業です。主な業務は、事件の当事者や保護者へのヒアリングおよびカウンセリングです。事件が起きた原因や背景を探り、裏付けを得る大切な役割があります。

 家庭裁判所調査官になるには、裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)に合格する必要があります。家庭裁判所調査官の給与の目安は400万円前後とされています。

生活相談員

 生活相談員は、介護施設などの福祉施設に所属し、利用者やその家族をサポートする職業です。業務内容は幅広く、入所に向けた事務手続きや、家族との面談、他の施設との連絡調整などを担当します。

 福祉施設の「窓口」として、高齢者の暮らしに寄り添いたい人に向いている職業です。生活相談員の給与の目安は300万円前後とされています。

心理学を学んだ人が活躍できる職場

 心理学を学んだ人が活躍できる職場は、大きく分けて6つあります。
  • 医療機関
  • 学校
  • 福祉施設
  • 一般企業
  • 研究機関
  • 公務員(法務省、警察ほか)
 医療機関や学校、福祉施設などでは、心理学に関連した国家資格を取得した人や、カウンセリングの技術を学んだ人が活躍しています。また、一般企業でも、産業カウンセラーなどのカウンセラー業務のほか、心理学部で学んだことを活かして働くことが可能です。

医療機関

 医療機関では、心理学を学んだ人が多数活躍しています。たとえば、総合病院や大学病院、クリニックの心療内科、リハビリテーション施設などが主な勤務先です。

 医師や看護師と連携しながら、うつ病や心身症などの治療に従事するほか、生活習慣病などの病気に対して心理的な側面からアプローチすることもあります。働くに当たって、公認心理師などの資格が求められることが一般的です。

学校

 学校で働く場合は、スクールカウンセラーや養護教諭などの職業に従事し、児童や生徒、保護者、教職員などのメンタルケアを行います。また、心理学に関連した資格を習得していると、教員採用試験の際に有利に働く場合があります。

 主に対処する必要があるのは、いじめや不登校などの生徒が抱える問題や、事故・事件に遭った被害者の心のケア、心身の健康を維持するためのストレスマネジメントの体制づくりなどが挙げられます。

福祉施設

 福祉施設では、高齢者や障がい者など、自立が困難な人の支援が行われています。とくに公認心理師などの資格を習得した人は、臨床心理学的な観点から、入所者の自立支援やメンタルケアに取り組むことが求められています。

 主な勤務先は、老人ホーム、デイサービスセンター、児童養護施設、児童相談所、障害者支援施設などです。

一般企業

 一般企業でも、心理学の知見やノウハウを持つ人材が求められています。従業員のメンタルヘルスを管理する産業カウンセラーのほか、社内相談窓口に公認心理師などの有資格者を採用するケースがあります。

 また、福利厚生の一環として、従業員支援プログラム(EAP)を採用する企業が増えてきました。EAPは従業員の健康相談やカウンセリングなどをサービス化し、他の企業に提供する取り組みです。大学で心理学を学んだ経験が、一般企業でもアドバンテージとなる場合があります。

研究機関

 大学卒業後も心理学を専攻したい人は、心理学の博士号を取得し、心理学者として研究機関で働くこともできます。大学・大学院の教員として研究をつづけるケースや、心理カウンセラーとして民間団体に勤めながら、著作を発表したり講演活動を行ったりするケースがあります。

 ただし、研究職を目ざす人の割合はそれほど多くありません。たとえば、関西福祉科学大学の心理科学科の場合、就職を選んだ人の割合は96.3%となっています。[注1]

[注1]関西福祉科学大学(心理科学科)「資格・就職キャリア」

公務員(法務省、警察ほか)

 犯罪心理学や青年心理学、心理関連の科学捜査に興味がある人は、公務員として専門知識を活かせます。公務員の中でも、いわゆる「心理職」と呼ばれる部門です。

 たとえば、受刑者の社会復帰を支援する法務技官(矯正心理専門職)や、各都道府県の警察本部に設置された科学捜査研究所の研究員のほか、現場の警察官として心理学の知識を活かす道もあります。

心理学を活かせるカウンセラー以外の職業

 心理学のノウハウを活かせるのは、カウンセラー業務だけではありません。ここでは、心理学を学んだ人に向いている「カウンセラー以外の職業」を7つ紹介します。

ビューティー・カウンセラー

 ビューティー・カウンセラーは、化粧品を取り扱う販売員ですが、単に化粧品を売っているのではありません。

 化粧品の中でも、ファンデーションの目的は、アザや傷跡、皮膚の変色を自然に隠す目的があります。それは、肌の外見を変えるだけでなく、心の苦痛を取り除くものでもあります。

 このように、化粧行動で女性の心の苦痛や心配を取り除くのが目的でもあり、心理学の基礎知識が大いに活用されています。

葬祭ディレクター

 うつ病を発症する可能性が最も高いものの一つに親族の死があります。

 人が亡くなられると葬儀が行われますが、今日の葬祭業界では葬儀後に、ご親族様のうつ病の発症を抑える目的で、グリーフケアーという心理カウンセリングの一つが取り入れられるようになっています。

 この一連の葬儀に関わるのが葬祭ディレクターであり、心理学の知識が大いに役立っています。

営業職

 心理学は、人の心や行動を科学的に理解するための学問です。心理学で学んだノウハウは、古くから一般企業の営業職で活用されてきました。

 たとえば、営業職の人が使うダブルバインドと呼ばれるテクニックは、心理学上の研究結果に基づいています。

ダブルバインド(double bind) 相手の選択肢を縛り、意図した選択をさせるテクニック

 営業職では、顧客の心理を理解し、深く共感したり傾聴したりするコミュニケーション能力が求められます。また、顧客のニーズに寄り添った提案をすることが、営業職としての成果につながります。

 とくに営業職で役に立つとされているのが、個人と社会の関わりを研究する社会心理学や、人の行動のメカニズムを解き明かす行動心理学です。

コンサルタント

 行動心理学を始めとした心理学の知見は、経営コンサルティング業務にも活用されています。コンサルタントは、クライアント企業が抱える経営課題を分析し、解決に導くのが仕事です。心理学を履修し、経営者の心理や消費者の心理を掌握することで、より効果的な助言やアドバイスを行えます。

 また、コンサルタントの中でも、従業員のキャリアを指導する「キャリアコンサルタント」には、職業能力開発促進法に基づく国家資格が存在します。大学の心理学部によっては、キャリアコンサルタントの資格習得に向けたカリキュラムが組まれている場合があります。

マーケティング

 行動心理学を学べば、商品・サービスの企画や、マーケティング戦略の立案にも役立ちます。たとえば、マーケターが使うテクニックの中には、行動心理学の研究成果に基づくものがいくつかあります。

希少性の原理 希少性が高く、なかなか手に入りにくい商品ほど消費者が価値を感じやすくなる
ザイオンス効果 消費者が興味を持たない商品でも、何度も目に触れているうちに好印象に変わることがある
ハロー効果 目立つ特徴があると他の要素の印象が薄くなり、似たような評価をしやすくなる

 また、大学の心理学部では、マーケティングに欠かせない統計学の手法も習得できます。心理学部を卒業することで、数字に強いマーケターになることが可能です。

コーチ

 従業員のメンタルヘルスの向上のため、相手の心理に働きかける「コーチング」の技術を取り入れる企業が増えています。大学の心理学部によっては、コーチングのノウハウを実践的に学ぶことが可能です。

人事職

 企業の人事や労務部門でも、心理学のノウハウを活かすことができます。人事職の主な仕事は、従業員の労務管理や人材採用、教育訓練などです。いずれも人と人が直接関わり、コミュニケーションをとる必要があるため、相手の心理を読み解く力が求められます。心理学を学ぶことで、対人関係のトラブルを防止し、従業員と円滑な関係を構築できます。

心理学で職業の選択肢は広がる

 心理学を活かせる仕事は、精神科医やカウンセラー、精神保健福祉士など、医療や福祉に関わるものが中心です。その中でも、2017年に誕生した公認心理師は、心理学の専門家として初めて認められた国家資格であることから注目を集める職業のひとつです。

 カウンセラー以外にも、心理学を活かせる職場はたくさんあります。一般企業でも、心の問題を科学的に分析・理解する心理学のノウハウを活かし、コンサルタント、マーケティング、コーチング、人事や営業などの分野で活躍する人が増えてきました。

 関西福祉科学大学の心理科学科では、データや実験に基づいた心理科学の学びを通じ、心の問題を科学的に分析・解決する「専門的職業人」の育成を目ざしています。大学が提供するカリキュラムを通じ、公認心理師や精神保健福祉士、認定心理士、認定健康心理士などの資格習得も可能です。心理学を将来のキャリアにつなげたい人は、関西福祉科学大学の心理科学科がおすすめです。

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