心理学の種類と心理学が学べる大学
  • 2023.09.20

 心理学は人間の行動・言動・思考から自身で認識できない行動(深層心理)を読み取る学問です。行動の科学といわれており、心理学を学ぶことで人間の深層心理への理解を深めます。
 心理学は基礎心理学と応用心理学に大別されます。基礎心理学は応用研究の基礎となる学問です。一方、応用心理学は、心理学を日常生活のさまざまなシーンで実用することを目的とした学問です。

 この記事では、心理学の種類とその研究内容について、基礎心理学と応用心理学に分けて解説します。

目次

心理学は「基礎心理学」と「応用心理学」の2種類に大きく分けられる!

 心理学は多岐にわかれており、大きく分類すると「基礎心理学」と「応用心理学」の2つがあります。

基礎心理学ってどんな学問?

 基礎心理学とは、すべての人間が持っている心の仕組みを科学的・理論的に解明する学問です。心の側面・仕組みを明らかにすることを目的とし、応用研究の基礎となる知識を積み上げていきます。いわば、心理学の一般法則となる学問です。

 基礎心理学はいくつかの種類に細分化されており、代表的なものに認知心理学・発達心理学などがあります。
 科学的な角度から心の側面・仕組みにアプローチする実験心理学も、基礎心理学のひとつといわれています。

応用心理学ってどんな学問?

 応用心理学は、基礎心理学を一般法則として日常生活のなかで具体的に活用していくことを目的とした心理学です。
 応用心理学には臨床心理学や犯罪心理学のほか、教育心理学・スポーツ心理学などがあります。多方面からの研究結果をもとに、心理学をさまざまな分野で実用することをめざした学問です。

基礎心理学の主な分野は9種類!内容をわかりやすく解説

 基礎心理学にはさまざまな分野があります。ここでは基礎心理学のうち9つの分野について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 認知心理学

 認知心理学では、人の認知(情動、知覚、思考、記憶)活動について研究します。
 人が目を覚ましているあいだの行動、会話や文章の読み書き、何かを考える、覚えるなどは、すべて認知活動です。

 たとえば目の前にある対象物を目で見たり触ったりして得た情報は、五感に送られこれまでの記憶や学習によって情報処理され、目の前にあるのが何かを判断します。この判断をするための活動が認知です。認知活動は、つねに正しく行われるわけではありません。これが記憶違いや思い違いなどです。

 認知心理学は、このような人の記憶や知覚の問題のほか、言語発達や学習障害などのテーマに興味がある人におすすめの心理学です。

2. 発達心理学

 発達心理学は、人が生まれてから大人になるまでの成長段階において、行動や言動、身体機能などに起こる変化について研究する分野です。
 幼児期・思春期・青年期・晩年期と、発達段階の一部を研究することもあれば、人が生まれてから寿命を全うするまでを研究する場合もあります。

 子どもの発達障害や老化による身体機能の問題などを研究したい人は、発達心理学がおすすめです。

3. 社会心理学

 社会心理学は、集団社会のなかで人間の心理がどのように変化するのかを研究する学問です。

 家庭や学校、職場など、人はさまざまな集まりのなかで、個人と個人、集団と集団、個人と集団など、多様な関わり方をしながら人間関係や集団を形成していきます。
 その社会構造や集団社会のなかでの行動変化や法則性、特定の行動によって生じる問題などを研究して解明していきます。

 社会心理学では、時代背景や社会現象、世論などによって生じる人や社会の行動変化・相互作用についても研究していきます。最近ではスマホやSNSを通して形成された集団心理や集団行動なども研究対象のひとつでしょう。

 人と社会の関わりや人間関係の形成などに関心がある人には、社会心理学がおすすめです。

4. 行動心理学

 行動心理学は、人の無意識な行動やしぐさから、その行動を起こした心理を読み取る研究です。顔を触る、髪の毛をいじる、目線がそれる、声が大きくなるといったしぐさや言動から、その人が何を考えているかを大まかに把握できます。日常生活はもちろん、ビジネスシーンで活用できる心理学です。

5. 生理心理学

 生理心理学(生物心理学)では、人の心理状態の変化が身体に及ぼす影響について研究します。たとえば、大事な試験や会議の前日に緊張で眠れなくなるのは、感情の動きによって身体が変化している代表的な例といえるでしょう。

 生理心理学の代表的な応用例として、ウソ発見器があります。脳波と心電図によって電気信号を測定し、心拍数や手汗などの身体の変化と感情の動きの関係性を解明します。

 生理心理学への理解を深めることで、他人や自分自身の心の動きを把握することができます。

6. 学習心理学

 学習心理学は、人や動物が生きていくなかでさまざまな経験を通じて学び、学びから行動が変化していく過程やその法則性について研究する分野です。

 学習心理学で有名な実験に「パブロフの犬」があります。
 この実験は、犬にベルの音を聞かせてから餌を与えることを繰り返し、次第に犬がベルの音を聞くだけで唾液を出すようになったというものです。
 この実験結果でわかることは、犬が経験を通じて「ベルの音が聞こえる=餌がもらえる」と学んだということです。

 これは人間も同様で、経験から得た学びによって行動が変化していきます。学習心理学を学ぶことで、自分の行動への理解を深めるだけでなく、ビジネスシーンや子育てにおいて、人の行動理解に役立ちます。

7. 性格心理学

 性格心理学(人格心理学、パーソナリティ心理学)は、人の人格・性格について研究する心理学です。
 優しい、明るい、短気など人はそれぞれ人格や性格が異なり、これらをパーソナリティと呼びます。性格心理学では、パーソナリティの形成について遺伝や家庭環境がどのような影響を与えるのかを中心に、部分的な人格や性格を自ら形成し、パーソナリティを作り変えることができるのかなどを研究します。

 性格心理学を学ぶことで、自分自身や周囲の人のパーソナリティへの理解が深まります。そのため、人間関係を良好に保つことや、コミュニケーション能力の向上につながります。

8. 知覚心理学

 知覚心理学は、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚といった人間の五感に関する研究をする心理学です。人は、ものを見る、音を聴く、ものに触れるなどの五感から知覚が生じ、知覚を通してさまざまなことを認識しています。
 知覚心理学では、その知覚と認識の関係を研究します。絶対音感についての研究なども、知覚心理学の分野で行っています。

9. 神経心理学

 神経心理学は、脳(神経系)と精神機能の関係を研究する学問です。神経心理学の対象は大脳損傷患者で、高次機能障害による患者の言動や思考、認知、記憶などへの影響を解明することを目的としています。

 神経心理学的検査では、知能・記憶・言語・実行機能(前頭葉機能)などを測定し、高次脳機能障害を客観的、定量的に評価します。測定結果からは、障害パターンや重症度の把握、時間的な変化の観察が可能です。

応用心理学の主な分野は9種類!内容をわかりやすく解説

 基礎心理学同様、応用心理学の分野も多岐にわたります。ここでは、主な応用心理学9つをそれぞれ詳しく説明します。

1. 臨床心理学

 臨床心理学は、心の病気の治療や予防を目的とした研究分野です。精神疾患が発症するきっかけや症状、治療方法を明らかにするために、患者の状態を確認しながら心理療法の実施やカウンセリング計画の立案・策定を行います。
 臨床心理学は病院やメンタルクリニックのほか、開業臨床などさまざまな医療現場で活用されています。

2. 犯罪心理学

 犯罪心理学は、その名のとおり犯罪または犯罪者の心理について研究する学問です。
 時代とともに複雑化・凶悪化する犯罪を予防する目的で生まれた、比較的新しい分野の心理学です。
 過去に罪を犯した人物のプロフィールや家庭環境、パーソナリティなどから犯罪傾向や特質を解析し、その後の事件解決や犯罪予防、犯罪者の更生などに役立てます。

 事件を解決するためには、犯行の背景や目的、犯人の心理など、さまざまな角度から調査しなければなりません。そのなかで、犯罪心理学も重要な専門知識のひとつといえるでしょう。

3. スポーツ心理学

 スポーツ心理学は、スポーツに関する課題を心理学的な側面からアプローチする心理学です。スポーツ心理学による科学的知識はさまざまなスポーツの実践・指導に提供され、アスリートがより高いパフォーマンスを発揮するために活用されます。
 代表的な活用方法としては、メンタルトレーニングやスポーツ臨床、実践心理などがあります。

4. 災害心理学

 災害心理学は、災害時での人間の心理や行動を研究する分野です。自然災害だけでなく、交通災害、労働災害、家庭災害など、あらゆる災害が研究対象となります。
 災害が発生したときに適切な行動が取れるか、災害にあったあとに状況などを検証し、人的二次災害の防止に役立てます。

5. 教育心理学

 教育心理学は、子どもによって異なる個性や発達段階を理解し、効率的な学校教育をめざすことを目的とした心理学です。
 児童生徒の心身の健やかな成長のために必要な知識やスキルの習得には、教育心理学は欠かせない分野です。そのため、学校の教員をめざして大学の教職課程を履修する人は必ず教育心理学を学びます。

6. 産業心理学

 産業心理学(産業・組織心理学)は、産業活動を行ううえで、ビジネス現場における人の心理について研究する心理学です。
 職場での人の感情変化やモチベーションが刺激される要因を明らかにするほか、従業員の離職防止や満足度向上、企業による従業員の生産性向上につなげるための手段、職場環境や従業員のストレス改善などを検証します。

7. 家族心理学

 家族心理学は家族が抱える問題の解決方法や克服方法について研究する分野で、1980年代に生まれた比較的新しい学問です。
 家族心理学の対象となる家族間問題は、夫婦問題(離婚や再婚など)、児童虐待・家庭内暴力・不登校などさまざまです。
 臨床やカウンセリングを通して、問題解決に必要な正しい知識や情報を導き出します。

8. 交通心理学

 交通心理学は、交通事故をはじめとした交通トラブル防止を目的にした心理学です。
 運転手や歩行者の行動や心理を研究し、事故の発生や再発防止に役立てます。

9. 芸術心理学

 芸術心理学は、芸術作品や芸術活動、芸術家などを心理学的立場から研究する分野です。研究対象は絵画や彫刻などの造形芸術、音楽などの音響芸術、演劇や舞踏などの表情芸術、文や詩、小説などの言語芸術です。

心理学を学ぶなら実践的なプログラムと幅広い研究分野がある大学がおすすめ

 心理学には基礎心理学と応用心理学があり、さらに研究対象や目的によって細かく分類されています。
 それぞれの研究内容や用途を理解したうえで、自分が学びたい分野を選別していきましょう。

 心理学を学べる大学は全国に数多くありますが、学校によって特色もさまざまです。
 関西福祉科学大学の心理科学科では、研究根拠に基づいた心理学のほか、「健康・医療心理学」「ポジティブ心理学」といった新しい分野の心理学を学べます。専門性の高い専任教員から、実践力を育む授業を受けられるのも魅力です。学部の4年間で、精神保健福祉士の国家資格取得をめざすこともできます。

 また、併設の大学院に進学することで、精神保健福祉士だけでなく公認心理師の国家資格取得をめざすことも可能です。

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