• TOP
  • 記事一覧
  • 犯罪心理学ってどんな学問?活かせる職業も詳しく紹介

犯罪心理学ってどんな学問?活かせる職業も詳しく紹介
  • 2023.08.23

 犯罪心理学とは、犯人はなぜ罪を犯したのか、また、なぜその場所で犯罪が起きたのかなど、犯行に関わる事柄を心理学の知識を使って研究する学問です。

 これらの研究結果は、防犯や犯人の更生に役立てられ、私たちが安心・安全に暮らせる社会を実現するうえでも大切です。

 本記事では、犯罪心理学とはどのような学問なのか、勉強した後に活かせる仕事、犯罪心理学を学ぶ方法を紹介します。

目次

犯罪心理学ってどんな学問?

 犯罪心理学では犯人の心の動きを研究するだけでなく、罪を犯した後の更生方法や、被害者の心のケアなど、犯罪に関わる事柄を心理学の面から研究します。研究結果は防犯対策のような日常生活にも役立てられ、私たちの生活の安全を支えています。

 犯罪心理学はどのような学問なのか、その歴史と具体的な活用場面、関連する学問を紹介します。

 

犯罪心理学ってどんな学問?

 「犯罪心理学」というと、犯人がなぜ罪を犯したのか、行動に及んだ動機や心理を研究する学問と思われるかもしれません。しかし、研究対象は犯人の心理だけでなく、犯罪行為を取り巻く事情を心理学的な方法を使って明らかにすることにまでおよびます。

 具体的には犯罪を調査する方法や、犯罪に対する人々の感情、心理学を使った防犯対策も研究対象に含まれます。

 このような事例の検討や統計の調査の分析や研究により、社会をより良く、安全なものに変えていく学問が犯罪心理学です。

犯罪心理学の歴史は?

 犯罪心理学の基礎が誕生したのは19世紀のイタリアです。精神科医のチェーザレ・ロンブローゾ氏が提唱した「犯罪人類学」と「犯罪学」のうち、犯罪学から派生した学問と考えられています。

 彼は、「犯罪者には普通の人とは異なる体の特徴や心の特徴があり、生まれたときから犯罪者になる運命を背負っている」とする「生来性犯人説」の立場から研究を進めました。

 しかし、現在では上記の説は科学的に否定されており、人が犯罪に至る理由は、生物学・心理学・社会学など、複数の要因によるものと考えられています。

 犯罪心理学はその後、フロイトの精神分析論をベースに発展をとげ、20世紀に入るとより学問的に確立されました。

 現在ではWHO(世界保健機関)により国際基準も整備され、日本国内でも日々、犯罪心理学が研究され発展をしています。

犯罪心理学はどんな場面で役立つ?

 犯人の心理だけでなく、犯罪を取り巻く事柄を心理学的に研究する犯罪心理学では、以下のようにさまざまな場面で役立ちます。

  • 犯罪の調査手法の研究
  • 司法の場での犯罪者の心理鑑定
  • 犯罪者心理を元にした防犯対策
  • 非行少年や受刑者の更生
  • 犯罪被害者の支援
 
 犯罪心理学を元にした調査手法では、アメリカのFBI(連邦捜査局)が開発した“プロファイリング”が有名です。
 プロファイリングとは、犯行現場に残されたデータを元に、犯人の人物像や、犯行に至った動機を推測する調査方法で、日本でも、実際に事件の解決に貢献しています。

 また、犯罪心理学を身近に活用した例では、防犯カメラの設置や、家の鍵を二重に施錠するなどの防犯対策が挙げられます。犯人が特定されたり、犯行までに時間がかかったりすれば、「犯罪により得られる利益よりも、不利益のほうが大きい」と思わせられます。犯人の損得勘定の心理を理解して、犯罪を予防する方法です。

犯罪心理学と関連する学問は?

 犯罪心理学が犯人や犯罪を取りまく心の面を研究する学問に対し、生物学や社会学から、犯罪を研究する学問もあります。犯罪を理解するためには、心理学的アプローチだけでなく、犯罪心理学に関連する学問の理解も大切です。
犯罪学
 犯罪と個人や社会との関係を幅広く理解するための学問が犯罪学です。
 犯罪心理学は犯罪学の一分類であり、精神医学や犯罪社会学、刑罰学なども含まれます。犯罪学は、犯罪と人との関係を科学的に証明するために発展を遂げました。


犯罪社会学
 犯罪心理学が犯罪者などの心の動きを研究対象とするのに対し、犯罪社会学は社会が犯罪者に与える影響を研究する学問です。
 たとえば、どのような環境だと犯罪は起きやすいか、非行集団はなぜ生まれるのか、などを研究対象とします。


司法精神医学
 司法精神医学は主に司法の場での精神鑑定に関連する学問です。
 精神鑑定とは精神科医などの専門家の立場から、犯罪者の心理状態を分析し、責任能力があるかなどを判定する方法です。

犯罪心理学を学ぶとどんな仕事に就ける?

 犯罪心理学を学ぶと犯罪被害者の支援を行う民間の仕事だけでなく、心理捜査官や科捜研職員など、専門職の公務員として働くときも有利です。ここでは、どのような仕事に付けるのか、仕事内容とともに解説します。

警察心理職

 警察心理職とは、警察職員の中でも心理学の知識を活かし仕事をする専門職員のことです。テレビドラマなどでは「(犯罪)心理捜査官」の名称で親しまれているものの、実はこの名称は一般的ではありません。多くの場合「心理員」や「心理職」などの名称で募集されるため注意しましょう。
 
警察心理職の仕事内容は?
 仕事内容は犯罪被害者に対するカウンセリングや、街頭での青少年への指導が主業務です。稀に、犯人の説得や警察職員のカウンセリングを行うこともあります。
 たとえば大阪府警では、「少年育成心理職」の名称で募集しており、警察官と共同で街頭補導や保護者・少年へのカウンセリング、学校で非行防止の広報活動などを行なっています。[注1]
 [注1]大阪府警察:少年育成心理職


警察心理職になるには?
 警察心理職になりたい場合、警視庁の警察行政職員Ⅰ類(心理職)、県警職員採用試験(心理職)、地方公務員上級試験(心理職)などの試験への合格が必要です。
 心理学の学位があれば有利なものの、自治体によっては公認心理師や臨床心理士の資格が必要であったり、試験種目に体力試験があったりします。また、募集人数も数名程度と多くはありません。なお、警察官とは異なるものの、採用後は警察学校での研修も行われます。

科学捜査研究所

 通称「科捜研」と呼ばれる研究機関で、警視庁のほかに、各都道府県警察本部に設置されています。事件現場に残された物品などをもとに、事件解決につながる手がかりを見つけるのが主な仕事です。

 なお、科捜研は法医科・化学科・物理科・文書科・心理科から構成され、このうち、犯罪心理学を学んだ学生は「心理科」で仕事をします。
科学捜査研究所職員の仕事内容は?
 心理科ではポリグラフ検査(うそ発見器)やプロファイリング、筆跡鑑定などを行います。また、稀に警察官に対して効果的な取り調べの方法のトレーニングも行います。
 他の科学調査では物証を調査対象とするものの、心理科では犯人を含む生身の人間を相手に調査を進める点が大きな特徴です。


科学捜査研究所職員になるには?
 警視庁の警察行政職員(専門職種)、地方公務員上級試験(心理職)、県警職員採用試験(研究職)などを受験し合格する必要があります。
 また、受験資格は年齢制限のほか、心理科の場合、心理学系の大学の学位が必要です。なお、科学捜査研究所は毎年募集をしているわけではなく、欠員補充が大半となります。
 その他、警察官とは異なるものの、科学捜査研究所職員も採用後は警察学校に入学し、1ヵ月程度かけて規則や法律などを学びます。

科学警察研究所

 通称「科警研」とは、千葉県柏市にある警察庁研究機関、科学警察研究所の職員です。科警研は、科学捜査や犯罪防止、交通事故防止などの研究・実験、鑑定・検査を主業務としています。

 科捜研との違いは、科捜研は現場検証があるのに対し、科警研は研究を主としているため、現場での業務はありません。科警研も医学や農学、心理学など、それぞれの専門家職員が集まり、研究を進めています。
科学警察研究所職員の仕事内容は?
 犯罪心理学を学んだ学生は、科警研の「犯罪行動科学部」などに配属され、犯罪者プロファイリングや、心理学を活かした取り調べ方法の研究、捜査支援業務などを行います。
 科警研では、捜査支援業務以上に、研究活動が多い点が特徴です。


科学警察研究所職員になるには?
 「国家公務員採用総合職試験(国家公務員Ⅰ種試験・人間科学Ⅰ)」への合格後、警察庁に科警研職員として採用される必要があります。
 また、試験は大卒者と院卒者で異なるほか、受験には年齢制限があります。専門試験は心理学や教育学など、専攻により選択できます。
 科警研職員も毎年募集している職種ではないため、注意しましょう。

家庭裁判所調査官

 家庭裁判所調査官とは、裁判官の指示を受け、家庭裁判所で取り扱う事件の調査や報告を行う仕事です。家庭裁判所調査官は心理学の知識を使い、当事者間の心の問題も含めた、最適な解決策を考える仕事です。
家庭裁判所調査官の仕事内容は?
 家庭裁判所では主に「家事事件」と「少年事件」を取り扱い、それぞれ仕事内容が異なります。
 家事事件では、当事者などと話し合いを進め、問題の原因を調査し、解決策を裁判官に提出します。場合によっては、当事者の気持ちの整理ができるよう、カウンセリングや、調停へ同行することもあります。
 一方、少年事件では、事件を起こした当事者の少年本人と家族に面談を行います。家庭環境も含め、犯罪の動機や発生原因を調査し、将来更生するために必要な方法も含め、裁判官へ報告します。また、保護観察中の少年の指導や助言なども業務のひとつです。


家庭裁判所調査官になるには?
 「裁判所職員採用試験 総合職試験(家庭裁判所調査官補)」を受験し採用されたのち、裁判所職員総合研修所で2年間の研修を修了する必要があります。
 試験は大卒者と院卒者で異なるほか、受験には年齢制限があります。専門試験は心理学や教育学など、専攻から2題選択し回答します。

法務省専門職員(保護観察官・矯正心理専門職・法務教官)

 法務省専門職員とは、いずれも少年院や検察庁などで心理学を活かし、非行少年の更生を計る仕事です。なかでも、矯正心理専門職は「法務技官(心理)」や「心理技官」などとも呼ばれています。
矯正心理専門職(法務技官(心理))の仕事内容は?
 少年鑑別所や少年院などに勤め、非行に走った少年に対し面談や心理検査を行い、非行原因の分析と、結果を元にした今後の処遇を検討します。また、少年院では受刑者の心理カウンセリングを行うこともあります。
 このほかに、学校関係者や保護者から子どもの教育方法などの相談に乗る活動も行っています。


矯正心理専門職(法務技官(心理))になるには?
 「法務省専門職員(人間科学)」の「矯正心理専門職A」(男性)または「矯正心理専門職B」(女性)のどちらかに合格し、採用される必要があります。
 なお、専門試験では心理学が必須問題として出題されます。

犯罪心理学はどこで学べる?

 犯罪心理学を基礎から勉強して、将来の仕事に役立てたいと考えているなら、専攻科のある大学に通うのがおすすめです。また、自主的に勉強したい人は、犯罪心理学の入門書も出版されているため、それらの本を読んで理解を深めてもよいでしょう。

大学で学ぶ

 犯罪心理学を本格的に勉強したいなら、犯罪心理学の教授がいたり、コースやゼミがあったりする大学で学ぶのがおすすめです。

 とくに、専門職の公務員試験では大学卒以上の学力が求められ、専門試験では心理学領域が出題されます。そのため、大学に通い、基本からしっかりと学ぶとよいでしょう。

本で学ぶ

 犯罪心理学に興味があり、自主的に勉強したいと考えている人は、本で学ぶのがおすすめです。入門書として読みやすい書籍が、各社から出版されています。

犯罪心理学を学ぶのはこんな人におすすめ!

 犯罪心理学は、将来、警察関係の仕事に就きたい人や、公認心理師のような国家資格を取得したい人に適した学問です。また、行動で犯罪の防止や予防をしたい、犯罪被害にあった人のサポートをしたいと考える人にもおすすめです。

 純粋に、人はなぜ罪を犯すのか知りたい、倫理的面から社会問題を考えたい、他者や自分の心の動きを論理的に理解したいと考えている人も、犯罪心理学は大変興味深い学問でしょう。

犯罪心理学を学びたいなら関西福祉科学大学の心理科学科へ!

 犯罪心理学とは、犯人の心理だけでなく、犯罪に関わる事柄を心理学の観点から研究する学問です。犯罪心理学を学べば、警察関係の職業や、心理カウンセラーのように人の心を支援する仕事に役立ちます。

 関西福祉科学大学心理科学部心理科学科では、公認心理師の資格を保有する教員陣があなたの学びをサポートします。また、本校では犯罪心理学の専門教授も在籍しているので、将来、司法領域の仕事に就きたい人にもおすすめです。

RECOMMENDATION

あなたにおすすめの記事