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管理栄養士と災害|管理栄養士ができる支援や備えとは
  • 2026.01.14

 突然大きな地震や台風などによる災害が起きたとき、管理栄養士としてできることは何があるのでしょうか?
 電気や水が止まり、食料も限られてしまう避難所生活では、避難した方たちの健康管理において、専門知識を活かしてできることがたくさんあります。
 災害時にどんな食の不安が起きるのかを紐解きながら、栄養のプロである管理栄養士だからこそできることをご紹介します。

目次

1. 災害時は「食」が原因となるリスクがたくさん

 食べることは私たちの生活の基盤です。
 そのため、地震や水害、大規模な停電などさまざまな災害が発生して被災すると、「食べる」という生活の基本すらままならなくなります。

 たとえば
  • 水やガス、電気などのライフラインが止まって食事がつくれない
  • 食材がなかなか手に入らず、食べられるものの選択肢が減る
  • 温かいものが食べられないなど美味しく食べることができない
  • 非常食ばかりで栄養が偏ってしまう
  • 栄養バランスの偏りによる持病の悪化や体調不良などのリスク
 など、普段は当たり前にできていた調理する・食材を手に入れるための環境がなくなるだけで私たちの生活は大きく脅かされてしまいます。

 特に非常食は炭水化物に栄養が偏りがちです。
 そのためタンパク質やビタミン、ミネラルなどが不足して、健康にもよくない影響を引き起こし、最悪な場合、震災関連死を引き起こしてしまうリスクもあります。

 だからこそ、健康リスクや二次被害を防ぐために、食事で被災者を守ることができるのが「管理栄養士」です。
 健康に暮らすための食事を栄養学の観点からサポートできる管理栄養士は、災害時にもきめ細やかな配慮と専門知識をもとに、「誰一人取り残さない」災害支援で頼りにされている存在です。

1-1. 物資供給不足やライフライン停止によるリスク

  • 災害で電気やガスなどのライフラインが止まったとき
  • 交通網が麻痺して食糧などを手に入れることが難しくなってしまったとき

 こんなとき、私たちは普段当たり前にできていた食事ができなくなってしまいます。
 具体的にどんなシーンで困るのか、考えてみましょう。

<具体的なお困りごと例>

  • 電気が止まって冷蔵庫が使えない
 野菜や肉・魚などの生鮮食品が冷蔵庫で保存できないため、すぐに傷んでしまい、食材が不足する

  • ガスが止まって火が使えない
 調理ができなくなり、加熱が必要なものや温かいものが食べられなくなる

  • 物流が止まって食材や物資が不足する
 栄養バランスの整った食事ができなくなる、あるいは食事量そのものが足りなくなる

  • 水道が止まるなどの水不足
 必要な水分を摂れなくなり、脱水症状や低体温症、エコノミー症候群を引き起こしやすくなる

  • 衛生の確保が難しくなる
 停電により冷蔵保存ができなくなることや、手洗いが十分にできないことで食中毒のリスクが高まる

 このように、食事ができないことの不安やストレスだけでなく、災害時には、健康を大きく損なってしまう様々なリスクが考えられます。
 だからこそ、管理栄養士が食や栄養管理の専門家として、少しでも災害時の被災者の健康を守ることが大切になってきます。

1-2. 栄養が偏る・足りないリスク

 避難所で配られる食料は「おにぎりやパン」「簡素なお弁当」「甘いもの」ばかりになってしまう場合もあります。
 そのため炭水化物が多く、塩分過多になりやすいものも多いです。こうした食事が続けば、高血糖や高血圧のリスクが高まります。

 偏った食事では、栄養バランスが崩れて疲れが取れにくくなったり、不眠や便秘・下痢・免疫力の低下などに陥ったりすることも少なくありません。
 さらに避難生活が長引けば、もとから高血圧の方や糖尿病の方だけでなく、今まで健康だった方にも悪影響を及ぼします。
 また、免疫力が低下して、避難所での風邪の蔓延(まんえん)などのリスクも考えられます。

1-3. アレルギー食・療養食などに対応できないリスク

 災害時は、食事に様々な配慮が必要な人への対応も難しくなってしまいます。

たとえば
  • 食物アレルギーのある人
  • 糖尿病や腎臓病などで食事制限がある人
  • ミルクや離乳食を必要とする乳幼児
  • 嚥下(えんげ)障害のある(うまく飲み込むことができない)高齢者

 など、食材や調理方法などに対して配慮が必要な人に対して十分な対応ができなくなる場合があります。

2. 災害時に管理栄養士にできること

 災害が起きると、普段当たり前にできていた食事ができなくなり、色々なリスクが生じてしまうことがわかりました。
 では、管理栄養士は、こうした災害時にどんなことで役に立てるのでしょうか?
 まずは管理栄養士の基本的な役割をご紹介しながら、管理栄養士の知識や経験が災害時にどのように役立つのかをお話ししましょう。

2-1. 限られた物資で「命をつなぐ」献立づくり

 災害時は手に入る食材が限られ、電気やガス・水道などのライフラインが止まってしまいます。
 そんな状況でも、管理栄養士は栄養学の知識を最大限に活かして、被災者の健康を守るための献立を考えたり、被災地に入るボランティア団体や災害支援を行う行政に「どんな対策が必要なのか」を食の専門家としてアドバイスしたりできます。

 また、避難所に届いた支援物資を有効活用しながら、少しでも栄養バランスが整った食事や、被災者のニーズに対応した食事を届ける方法や献立を考えることもできるでしょう。

2-2. 食を通じて被災者の心にも栄養を

 災害時の食事が果たす役割は、単にお腹を満たすだけではありません。
 温かい食事や、食料はあるという安心が、被災者の方々の心の支えになります。

 たとえば温かい食事を少しでも用意することができれば、暖房のない冬の避難生活でも少しでもあたたかく、そしてホッとできる時間を届けられるかもしれません。
 また、嚥下障害と言って飲み込むことが難しい方にも、どう対応してあげれば食事がしやすいかをアドバイスできれば、高齢の方が食事で不安を感じることも減らせるかもしれません。

 災害に直面すると、被災者は「みんなつらいのは同じだから」「私だけがつらいのではない」と我慢してしまいがち。
 そんなとき、管理栄養士が食の専門家としてサポートしてあげれば、被災者の心と健康の支えとなります。
【能登半島地震での例】

 2024年に発生した能登半島地震では、管理栄養士が避難所で過ごす被災者の健康を守るために活躍したという事例があります。石川県珠洲市内の避難所で、管理栄養士が運営スタッフから食事のメニューをヒアリングし、「塩分過多で高血圧にならないか」といった不安を抱いている被災者に対して、カップ麺の食べ方を工夫する方法などをアドバイスしました。

 こうした取り組みは、2011年の東日本大震災からの教訓を受けて、さまざまな試みが始まっています。
 たとえば、日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)は2012年に結成され、被災地で行政と連携しながら特殊栄養食品ステーションを配置するなど活動をしています。

3. 普段から「食の防災」をリードする存在に

 管理栄養士が災害支援で活躍するのは、災害が起きてからだけではありません。
 災害が起こる前から、地域や社会の「食の防災力」を高めるためにできることはたくさんあります。
 具体的に、どんな場面で活躍しているのかご紹介しましょう。

3-1. 防災食の開発・普及

 健康と栄養バランスの専門家として、管理栄養士が長期保存ができ栄養バランスがいい災害食の開発に携わっています。
 また、非常食を日常的に消費しながら備蓄するローリングストックの普及活動を行っている管理栄養士もいます。

3-2. 学校や施設の備蓄計画

 学校や病院、高齢者施設などの備蓄計画を立てる上でも、管理栄養士の活躍フィールドがあります。
 災害時にどんなものを備蓄しておけばいいのかを、栄養管理の観点から考え、食料備蓄計画の策定をすることもその仕事の一つです。また、持病がある人のためのアレルギー対応食・糖尿病の人の食事の準備など、専門的な視点からアドバイスを行います。

3-3. 地域での啓発活動

 普段はあまり栄養管理に関心がない人に対して、災害時の対策として必要な知識を届けるのも管理栄養士だからできる社会貢献です。

 たとえば防災イベントや地域の集まりで、非常時の栄養管理や調理の工夫について講演したり、実践的なワークショップを開催したりして、住民の防災意識を高めることもできるでしょう。

4. 災害時にも活躍できる管理栄養士になるには

 普段の生活だけでなく、災害が起きたときでも、誰かの役に立てる管理栄養士になるためには、一体どんなことを学べば良いのでしょうか?

 災害時、大切な家族や地域の人たちを支えられる管理栄養士になるための具体的な学びの内容について、ミライドプログラムの中からピックアップして紹介します。

4-1. 災害心理学

 災害やリスクを心理学の観点を用いて科学的に見て、分析することができるようになることを目的とする科目です。
 災害に直面した場合の心理を知ること、災害によるリスクに対する心理を知ることについて学びます。

 たとえば、災害が起こると、普段通りの生活ができなくなり、心も体も強いストレスを受けます。その結果、食欲が落ちたり、料理をする気力がなくなったりして、食事量が減りやすくなると言われています。

 こうした災害時の心のストレスについて学ぶことで、災害時にはどんな栄養や調理の知識が必要になるかを考えるヒントを得ることができるでしょう。

4-2. 災害支援論

 災害支援論では、今までに起きた大規模自然災害の事例などもヒントにしながら、福祉の視点からどんな支援ができるのかを学びます。
 教室での座学だけでなく、グループ学習や外部講師による講演、フィールドワークを通して、大規模自然災害において、「各援助職に何ができるか」「何をしなければならないのか」を自ら考えられるようになることが目的です。
 「災害時にどんな食の支援が必要か」「どの栄養が不足しやすいか」を理解し、次の災害に生かすための研究も続けられています。

4-3. ボランティア活動論

 ボランティア活動論では、高齢者・子ども・障がいのある人など、さまざまな立場の人へのボランティア活動を具体的な例を通して学びます。
 また、災害時の支援や、活動内容ごとにどんなボランティアがあるのかなど、幅広い分野のボランティアの現状について理解を深めることを目的としています。

 さらに、ボランティアを支えているメディア、制度、行政、団体などについて知ることで、「ボランティアが活動しやすい環境を整えるには何が必要か」を考えられるようになります。社会のさまざまな問題に気づき、自分たちがどんな解決に参加できるのかを考え、行動してみようとする姿勢を身につけることが、この学びの大きな目標です。

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