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作業療法士についてわかりやすく知りたい
  • 2023.10.31

 病気やケガによって、食事、着替えなど日常生活に必要な行為が行ないづらくなってしまった人がいます。このような人のケア、サポートをするのが作業療法士です。

 この記事では作業療法士の仕事内容や活躍する職場、資格習得の方法などを解説します。

目次

作業療法士ってどんな職業?

 作業療法士は全国の病院や老人保護施設などで活躍している職業です。作業療法士はOT(Occupational Therapist)の愛称でも知られています。

 ここでは作業療法士の職業について、他の職業との比較などを通じて解説します。

作業療法士とは?

 作業療法士とはリハビリテーション分野における専門職です。作業療法士の資格は、理学療法士及び作業療法士法で国家資格として定められています。

 作業療法士は身体機能だけではなく、精神機能の改善、また、食事、着替えといった日常生活に欠かせない行為や社会に参加するための訓練を行ないます。

作業療法士の主な仕事内容

 作業療法士の名称にもなっている「作業」は主に次のようなことを指します。
  • 食事や入浴などの身のまわりの活動
  • 家事や仕事
  • 趣味などの活動
 作業療法士は、病気やケガ、認知症、統合失調症などさまざまなな理由でこのような作業が行なえなくなった患者さんのサポートを行ないます。
 具体的には、理学療法によって基本動作が回復した患者さんを対象に、作業活動を通じて能力の維持や改善を図ります。一般社団法人日本作業療法士協会は、作業療法士が維持と改善を図る能力として次の3つを挙げています。
  • 基本的動作能力:運動や感覚・知覚、心肺や精神・認知などの心身機能
  • 応用的動作能力:食事やトイレといった日常生活で求められる活動
  • 社会的適応能力:地域の活動への参加や就業・就学
 作業療法士はこれらの能力の維持や改善を図って、それぞれの患者さんらしい生活を送れるようにサポートします。

作業療法士と理学療法士の違い

 作業療法士と関係する職業として挙げられるのが理学療法士です。作業療法士、理学療法士ともに国家資格が必要な職業ですが、仕事の内容や対象となる患者さん、治療の方法が次のように異なります。

  作業療法士 理学療法士
仕事の内容(目的) 日常生活や社会への適応をめざす 立つ、歩く、座るといった日常の基本動作の回復をめざす
対象となる患者さん 身体もしくは精神に障がいがある患者さん 身体に障がいがある患者さん
治療の方法 作業活動 運動療法、物理療法

 理学療法士は歩く、座るといった運動機能回復の専門家なのに対して、作業療法士は生活や生きがいを支援する立場といえます。

作業療法士の資格を活かして働ける職場

 作業療法士の資格を活かして働ける職場は病院や介護老人保健施設、児童福祉施設など多岐にわたります。また、保健所に勤務している作業療法士もいます。

病院

 病院は多くの作業療法士が勤務している職場です。一般社団法人日本作業療法士協会が会員を対象に行なった調査では、病院に勤務する作業療法士の人数は35,041人で、割合は全体の56.7%に上るほどでした。このうち一般病院に勤務する作業療法士の人数は27,429人と半数以上を占めています。[注1]

 一般病院での作業療法士の役割は患者さんの状態によって次のように異なります。
  • 急性期(病気発症直後や手術後など):リスク管理をしつつ機能回復をめざす
  • 回復期(状態が安定している時期):社会生活への復帰をめざして訓練をする
  • 慢性期(治癒が困難で継続的なケアが必要な状況):日常生活や社会に必要な機能・活動を維持・改善する
 患者さんのなかには、長期にわたって病院に入院することもあります。また入院生活に不安を抱いている患者さんもいるかもしれません。そのため、患者さんの心理や精神面に寄り添ったケアが求められるでしょう。

 [注1]一般社団法人日本作業療法士協会「2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料」

精神病院

 一般社団法人日本作業療法士協会の発表によれば、精神病院で勤務する作業療法士の人数は5,588人となっていて、一般病院に次ぐ多さです。[注2]

 精神病院に勤務する作業療法士が対象とする患者さんは、統合失調症やうつ病などを抱える患者さんです。そのため、機能回復のみをめざすのではなく、日常の作業ができなくなっている理由を分析して、それを克服するための訓練を重ねていきます。

 [注2]一般社団法人日本作業療法士協会「2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料」

クリニック

 クリニック(診療所)に勤務する作業療法士は1,542人、病院に勤務する作業療法士の人数である35,041人のうちの4%と少ない傾向にあります。[注3]

 クリニックでは外来の患者さんに対して機能の回復や改善、日々の作業活動の改善を図ります。新たな患者さんと接する機会も多くあります。

 [注3]一般社団法人日本作業療法士協会「2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料」

介護老人保健施設

 介護老人保健施設において作業療法士は、機能訓練や日常生活の動作訓練を行ない、入居者が自宅やグループホーム、有料老人ホームに帰れるようにサポートします。
 また、共に勤務している介護士へ、介助方法やリハビリ方法のアドバイスを行なうことも介護老人保健施設における作業療法士の重要な役割です。

 一般社団法人日本作業療法士協会によれば、介護老人保健施設に勤務する作業療法士の人数は4,732人と、介護保険法関連施設に勤務する作業療法士(6,147人)の約76%を占めています。[注4]

 [注4]一般社団法人日本作業療法士協会「2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料」

特別養護老人ホーム

 特別養護老人ホームは、介護が必要で自宅での生活が難しい高齢者の方を対象に、生活の介護を提供している施設です。
 そのため、特別養護老人ホームに勤務する作業療法士は施設利用者の生活全般を支援します。施設の利用者が安心かつ楽しく暮らせるように、暮らしの質を保つことが作業療法士に求められます。

 特別養護老人ホームに勤務する作業療法士の人数は687人で、老人福祉法関連施設に勤務する作業療法士(2,274人)の約30%となっています。[注5]

 [注5]一般社団法人日本作業療法士協会「2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料」

児童福祉施設

 作業療法士が活躍する児童福祉施設として、障がいのあるお子さんの発達を支援する児童発達支援センターや障害児入所施設が挙げられます。

 このような児童福祉施設に勤務する作業療法士は、障がいのあるお子さんが生活を送るうえで必要な能力習得のサポートを行ないます。また、障がいのあるお子さんの家族の相談・支援や地域への啓発なども大切な業務です。

 児童福祉施設に勤務する作業療法士の人数は1,238人とされています。[注6]

 [注6]一般社団法人日本作業療法士協会「2019年度 日本作業療法士協会会員統計資料」

障害者施設

 作業療法士が勤務する障害者施設として、障害福祉サービス施設が挙げられます。障害福祉サービス施設は利用者が自立した生活を送れる、就労を維持できるようになることを目的としています。そのため、作業療法士は利用者の生活の困りごとを解決したり、就労するための提案や計画を立案したりします。

保健所

 保健所も作業療法士が活躍する職場です。保健所に勤務する作業療法士の重要な役割は、リハビリについて啓発を行うことです。そのため、リハビリ教室の企画や運営などに携わります。

作業療法士のやりがい・魅力は?

 さまざまな職場で活躍する作業療法士ですが、いずれの職場でも作業療法士ならではのやりがいや魅力が感じられるでしょう。
 ここでは作業療法士のやりがい、魅力について紹介します。

病気や怪我をした人の社会復帰をサポートできる

 作業療法士は運動機能の回復だけではなく、患者さんが社会復帰するために必要な機能回復までをサポートできます。患者さんが社会に出てから、その人らしい人生を送れるように道筋を作ってあげられるのは、作業療法士ならではのやりがいといえるでしょう。

身体と心の支えになれる

 作業療法士がサポートするのは、事故や病気で身体に障がいのある患者さんだけではありません。精神に障がいがある患者さんもサポートします。そのため、身体、心どちらの支えにもなることができます。

 患者さんのなかには、何らかの障害があることによってやりがいを失ってしまった方がいるかもしれません。作業療法士はこのような患者さんが再びやりがいを見つけられるように、心身両面からサポートしていきます。

感謝の言葉をかけられる

 作業療法士は患者さんが再び社会復帰や生活を送れるためのサポートを行ないます。サポートを続けているうちに患者さんの機能が回復してくると、患者さんから感謝の言葉をかけられることもあります。また、患者さん本人だけでなく、患者さんの家族からも感謝の言葉をかけられることがあります。

作業療法士になるには?

 作業療法士になるには、国家試験を受験して合格しなければなりません。また、作業療法士の国家試験を受験するためには専門性を学べる学校に通う必要があります。

作業療法士の養成課程のある学校に通う

 全国には作業療法士の養成課程を設けている4年制大学、3年制短期大学、専門学校があります。作業療法士になるには、このような作業療法士の養成学校に通い、規定のカリキュラムを修了して卒業しなければなりません(卒業をすると国家試験受験資格が得られます)。

 様々な養成学校がありますが、自分のキャリアプランをイメージして選ぶようにしましょう。例えば、様々な分野を学びながら専門性のある知識と技能を修得したいという方は4年制大学、早く現場に出るなら3年制短期大学、専門学校といったように、それぞれの特徴と自分の将来像を照らし合わせて選ぶのがおすすめです。

作業療法士の国家試験を受験する

 作業療法士の国家試験は毎年1回実施されていて、10,100円の受験手数料が発生します。試験は筆記試験で行われ、一般問題と実地問題が出題されます。厚生労働省が発表している試験科目は次のとおりです。[注7]
  • 一般問題:解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学(リハビリテーション概論を含む)、臨床医学大要(人間発達学を含む)および作業療法
  • 実地問題:運動学、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要(人間発達学を含む)および作業療法
 作業療法士の国家試験はこれまで50回以上実施されていて、近年5回の合格率の平均は、約80%です。
回数 受験者数 合格者 合格率
第52回 [注8] 5,983人 5,007人 83.7%
第53回 [注9] 6,164人 4,700人 76.2%
第54回 [注10] 6,358人 4,531人 71.3%
第55回 [注11] 6,352人 5,548人 87.3%
第56回 [注12] 5,549人 4,510人 81.3%
平均 6,081人 4,859人 79.96%

 [注7]厚生労働省「作業療法士国家試験の施行」
 [注8]厚生労働省「第52回理学療法士国家試験及び第52回作業療法士国家試験の合格発表について」
 [注9]厚生労働省「第53回理学療法士国家試験及び第53回作業療法士国家試験の合格発表について」
 [注10]厚生労働省「第54回理学療法士国家試験及び第54回作業療法士国家試験の合格発表について」
 [注11]厚生労働省「第52回理学療法士国家試験及び第52回作業療法士国家試験の合格発表について」
 [注12]厚生労働省「第56回理学療法士国家試験及び第52回作業療法士国家試験の合格発表について」

病院や福祉施設で働く

 国家試験に合格し、晴れて作業療法士の資格を取得したら、病院や福祉施設など作業療法士が求められている職場に就職します。どのような職場に勤務するかは自分が将来どんな作業療法士になりたいかを想像して選びます。

 例えば、病院の作業療法士は、機能や生活の回復や改善のための個別のリハビリが中心なのに対して、介護施設では生活を支えるために集団のリハビリ、介護士へのアドバイス等も必要になります。そのため、機能や生活の回復・改善のための個別のリハビリについての経験を積んでいきたいのであれば病院、生活を支えるための集団のリハビリ等についての経験を積むのであれば介護施設といった選択肢もあります。

作業療法士は患者さんの生活を向上させる大切な存在

 作業療法士は立つ、歩くといった基本的動作以外にも、社会的適応能力として地域の活動への参加や就業、就学といった社会参加までをサポートする大切な存在です。

 作業療法士になるには養成学校に通い、国家試験に合格する必要があります。

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