正式名称:厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)「慢性疲労症候群の実態調査と客観的診断法の検証と普及」研究班

お知らせ

◯2013.6.24 ウェブサイトをリニューアル致しました。

平成25-27年度(3年間)厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)(神経・筋疾患分野)「慢性疲労症候群の病因病態の解明と画期的診断・治療法の開発」研究班(代表研究者 倉恒弘彦)発足のお知らせ

目的:
1)慢性疲労症候群(CFS)患者に対して、ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)検査を実施し、脳内の異常の存在が明らかな患者における末梢血中等のバイオマーカーを探索する。
2)マルチオミックス解析(メタボローム、プロテオーム、トランスクリプトーム、ゲノム)、ウイルス免疫学的測定、酸化ストレス・代謝機能測定等によりCFSに特化したバイオマーカーを網羅的に探索する。さらに、統計手法を用いてCFSのグループ化も行う。

平成25年度~のCFS研究

 

御挨拶

厚生労働科学研究(障害者対策総合研究事業)「慢性疲労症候群の病因病態の解明と画期的診断・治療法の開発」研究班

代表研究者  倉恒 弘彦 
関西福祉科学大学 教授 
大阪市立大学 客員教授  
東京大学 特任教授    


 慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome: CFS)とは、これまで健康に生活していた人がある日突然原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、それ以降強度の疲労感と共に、微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感や、思考力の障害、抑うつ等の精神神経症状などが長期にわたって続くため、健全な社会生活が送れなくなるという病気です。1988年、米国疾病対策センター(CDC)よりCFSの報告が行われて以降、アメリカだけでなくカナダ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、オーストラリアなど世界中の国々においてCFS症例の存在が報告され、その病因・病態の解明や診断、治療法の開発が進められています。

  我が国におきましても、1991年より旧厚生省にCFS研究班(主任研究者:木谷照夫)が発足し、6年間(1991年4月~1997年3月)に渡って病因・病態の解明、治療法の開発に向けた臨床研究が行われています。1999年、「疲労の実態調査と健康づくりのための疲労回復手法に関する研究」の中で慢性疲労の実態調査(対象:一般住民4,000名、有効回答者3,015名(75.4%))を行いましたところ、国民の35.6%が慢性的な疲労を自覚しており、生活に何らかの支障をきたしている方が約5.2%存在することが明らかになりました。なかでも重篤な慢性疲労状態であるCFSの診断基準を満たす方も0.3%確認されていまして、この数字を単純に現在の日本人口1億2千万人に当てはめてみますと、我が国ではCFS患者は実に約36万も存在することとなります。

  2012年、13年ぶりに同一地区の疫学調査(対象:一般住民2,000名、有効回答者1,149名(57.5%))を行った結果でも、6か月以上の慢性的な疲労を自覚している方が38.7%おられ、全身倦怠感のため月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要であると答えた方が2.1%認められました。さらに、2012年に改定したCFS臨床診断基準を満たす方が0.1%、1999年のCFS診断基準を満たす可能性がある方が0.2%認められており、CFSは21世紀の社会において対応すべき疾病の1つであることは間違いありません。

  しかし、日本を含めて世界中で用いられてきたCFS診断基準は問診票を用いた症状診断と臨床検査による除外診断を組み合わせたもので、保険診療で認められている一般臨床検査には異常が認められませんので、CFS患者が医療機関を受診しても十分な対応を受けることが難しい状況にあります。その上、現在診療上用いられているCFSという病名は疲労が単に長く続いていることを示すような印象を与えるため、誰もが日常生活において自覚している疲れを強く訴えているに過ぎないと思われがちであり、誤解や偏見を受ける要因の1つとなっています。

  ここで重要なことは、CFSは決して詐病のような病態ではないことが判明していることです。CFS患者の病因・病態には脳機能異常が深くかかわっており、特に重症のCFS患者では中脳や視床における炎症が存在することがポジトロンCT(PET)などの特殊検査装置を用いた検査で分かってきました(2011年度報告書)。この脳における炎症は、通常の頭部CT検査やMRI検査ではみつけることができません。また、種々の免疫機能、自律神経機能、睡眠覚醒リズム、酸化ストレス、内分泌系評価、ウイルス学的検査などの成績においても多くの異常がみられており、CFSは決して自覚している疲れを強く訴えているような病態ではないことが確認されています。

  我々は、日本におけるCFS患者の実態を明らかにするために、2012年度にCFS診療を行っている医療機関の協力を得てCFS患者470名(平均年齢:40.8±10.5歳、男性161名、女性309名)の調査を行いましたところ、日常生活のかなり多くの部分が疾患により阻害されている実態が明らかになってきました。CFSに対する治療を受けていても回復がみられない患者が半数近くおられ、PS7(身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である)以上の状態が続いている患者も1/4近く認められています。このような重症のCFS患者の多くは、家族の支えにより何とか生活をしているのが実態であり、最低限の国民生活を営むためには社会的な支援が必要であると思われます。

  2012年度の班研究ではCFS診断基準についても検討を行い、より簡便に疲労診療において活用できるようにCFS臨床診断基準とCFS診断における補助的検査(客観的疲労評価)を表にまとめ、さらにCFS診断に必要な最低限の臨床検査と除外すべき主な器質的疾患・病態を別表として明示しました。また、2012年3月に発表されたCFS診断基準では「PSによる疲労・倦怠の程度」評価が削除されていましたが、平成24年度の検討によりCFS患者と他の不定愁訴を訴える患者や健常者との鑑別において有用であることが確認されたため、PSによる疲労・倦怠の程度評価(別表)を追加しています。

  今後の喫緊の課題としては、①全国各地においてCFS患者を診療してくれる医療体制を整えること、②軽作業もできずに日常生活において困窮している重症のCFS患者に対しては公的な扶助制度を利用できるようにすること、③治療に反応して回復がみられるCFS患者に対しては、内科医、精神科医、心理士の連携医療と共に、社会への復帰に向けたリハビリテーション、作業療法、理学療法などの支援体制を整えることなどがあり、実現に向けて取り組む必要があります。

  年度ごとの班研究成果の詳細につきましては、このウェブサイト上の「班研究報告書」に記載されていますので、ご参照頂けると幸いです。

慢性疲労症候群(CFS)診断基準(平成25年3月改訂)の解説

  平成24年度厚生労働科学研究(障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野))「慢性疲労症候群の実態調査と客観的診断法の検証と普及 」研究班1)(以下「H24年度CFS研究班」という)において、平成23年度に作成された日本における「慢性疲労症候群(CFS)の診断基準」2)の改定が行われた。以下に、その診断基準改定の背景、考案を含めて全文を記す。

H24年度CFS研究班 代表研究者 倉恒弘彦
班員: 谷畑健生、福田早苗、稲葉雅章、野島順三、近藤一博、伴信太郎、下村登規夫、久保千春、松本美富士、山野嘉久

診断基準改定の背景

  CFSは、原因が明らかでない激しい慢性的な疲労を訴える患者の病因・病態の解明を目的に1988年に米国疾病対策センター(CDC)により作成された疾病概念である3)。 

  日本においては、1991年に厚生省特別研究事業「本邦におけるchronic fatigue syndromeの実態調査ならびに病因・病態に関する研究」(班長:木谷照夫)が発足し、CDCより発表されたCFSのworking case definitionを元にCFS診断基準(試案)4)が作成されている。それまでは病態の定義が曖昧で、除外診断の範囲も各診療者の個人的な恣意に任されていたCFSの診断が、このCFS診断基準の作成により一定の枠組みが明確になり、その後の日本におけるCFS診療や臨床研究の礎として活用されてきた。

  しかし、諸外国に目を向けてみると2003年にはCFSの病因・病態の解明に向けて層別解析の必要性を認めたCDC診断基準5)が発表され、2011年にはCFSと類似病態と考えられているMyalgic encephalomyelitis(ME)の国際診断基準6)が発表されるなど、日常診療や臨床研究における診断基準の見直し作業が進められている。残念ながら、未だCFSには共通した明確な病因に結びつく検査異常が見出されていないことより、いずれの診断基準も患者の症状を元にした操作的な診断法にとどまっており、また疲労による生活の障害の程度の認定と疲労をきたす病態の除外診断から成り立っていることより、CFSという病態の存在に懐疑的、否定的な意見も多くみられる。

 我々は、慢性的な激しい疲労で苦しむ多くの患者が診療を受ける施設を探すのにも苦慮している現状に配慮し、プライマリケアを担っている医師が慢性的な疲労を訴える患者を診療する際の診断手順を分かりやすく示した診断指針を取りまとめ、日本疲労学会シンポジウム「慢性疲労症候群診断基準 改定に向けて」(2007年6月30日)の中で「新たな慢性疲労症候群診断指針」として発表してきた7)

 当初、この診断基準の中には疲労を客観的に評価できるような検査所見を取り入れる予定であったが、文献的な解析ではCFS診断基準に客観的なマーカーとして取り入れることのできるような検査所見は感度と特異度の観点から確認することはできなかった。そこで、学会の方針として、今後の日本におけるCFS診療においては日本疲労学会の「慢性疲労症候群診断指針」を推奨するが、数年をかけてCFS診療に携わっている日本各地の施設が協力して共通の検査方法で検証し、最終的には日本疲労学会の「慢性疲労症候群診断指針」にいくつかの客観的な疲労マーカーを取り入れたCFS診断基準を作成することが決められた。

 平成21年度から3年間行われた障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)「自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成」(代表研究者:倉恒弘彦)2)(以下「H21-23年度CFS研究班」という)はこの考えのもとに行われたものである。上記班研究成果は、平成24年3月に客観的な指標を取り入れた「慢性疲労症候群(CFS)診断基準」として発表され、H24年度CFS研究班により疲労診療を担っている医師がより活用可能な診断基準として一部改定が行われた1)

慢性疲労症候群(CFS)診断基準(平成25年3月一部改訂)1)

  6か月以上持続ないし再発を繰り返す慢性的な疲労を主訴とした患者を診察する場合、表1に示す慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準を用いた診断を実施し、前提Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、を満たしたときCFSと診断する。前提Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのいずれかに合致せず、原因不明の慢性疲労を訴える場合は、特発性慢性疲労(Idiopathic Chronic Fatigue:ICF)と診断し、経過観察する。

 CFSと診断された患者に対して、感染症後の発病が明らかな場合は感染後CFSと診断する。気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、身体表現性障害、不安障害、線維筋痛症などの併存疾患との関連については併存疾患の発症時期により、A群(併存疾患をもたないCFS)、B群(経過中に併存疾患をもつCFS)、C群(発病と同時に併存疾患をもつCFS)、D群(発病前から併存疾患をもつCFS)の4群に分類する。

 さらに、疲労病態の客観的な評価を行うために表2に示されている客観的疲労評価によるCFSのレベル診断を行い、補助的検査レベル評価を0~4の5段階で実施することが望ましい。

考案

 CFSとは、これまで健康に生活していた人が感染症などに罹患したことなどをきっかけに原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、それ以降激しい疲労感と共に微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感や、思考力の障害、抑うつ等の精神神経症状などが長期にわたって続くため、健全な社会生活が送れなくなるという疾患である3,4)。最近の研究により、CFSは単なる神経症的な病態ではなく、神経系、免疫系、内分泌・代謝系の異常が複雑に絡み合った病態であることが明らかになってきている。多くのCFS患者を調べてみると、ヘルペスウイルスの再活性化や、自己抗体の存在、酸化ストレスの増加、抗酸化力の低下、NK活性や単球機能の低下、リンパ球のサブセット異常、種々のサイトカインの異常、視床下部・下垂体・副腎系の異常、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、基底核などにおける局所脳血流量の低下、右内側前頭皮質、脳幹部、帯状回やその近傍の内側皮質における糖代謝の低下、背外側前頭野の委縮など明らかな異常が見つかっている8)

 1999年、厚生労働省研究班(旧厚生省、班長:木谷照夫)が15~65歳の一般地域住民4,000名を対象に疲労に関する疫学調査(有効回答数3,015)を行ったところ、1,078名(35.8%)の人が半年以上続くか繰り返している慢性的な疲労を自覚していることが明らかになった。慢性疲労を感じている人の半数近くでは自覚的な作業能力が低下しており、激しい慢性的な疲労のために学校や会社を時に休む、しばしば休む、休職・退職の状態にあると答えた人は合わせて105名で、全体の3.5%に及び、質問紙調査で厚労省CFS診断基準を満たすものも8名(0.3%)いることも判明した9)。 

 2012年、H24年度CFS研究班が同一の地域における一般地域住民2000名を対象に再調査(有効回答数1164)を実施したところ、445名(38.7%)の人が慢性疲労を自覚し、また、学校や会社を時に休む、しばしば休む、休職・退職の状態にあると答えていたものも1999年とほぼ同様に24名(全体の2.9%)確認されている1)。したがって、慢性的な疲労の診療はプライマリケアを担っている医療機関においても重要な課題の1つとなっている。

 今回のCFS診断基準改定の特徴は、医師がより簡便に疲労診療において活用できるように慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準(表1)とCFS診断における補助的検査(客観的疲労評価)(表2)を明示し、さらにCFS診断に必要な最低限の臨床検査(別表1-1)と除外すべき主な器質的疾患・病態(別表1-2)を表としてまとめたことにある。また、2012年3月に発表されたCFS診断基準2)では「PS(performance status)による疲労・倦怠の程度」評価が削除されていたが、平成24年度の検討によりCFS患者と他の不定愁訴を訴える患者や健常者との鑑別において有用であることが確認されたため、2013年3月に策定された診断基準に、PSによる疲労・倦怠の程度評価(別表1-3)が追加された。

 さらに、併存疾患として認められている気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、身体表現性障害、不安障害、線維筋痛症、過敏性腸症候群など機能性身体症候群に含まれる病態については、これまでの診断基準ではCFSの発病前より認められる場合は除外されていたが、CFSの病因・病態の層別解析を進める目的にて「発病前から併存疾患(病態)をもつCFS(D群)」として包含されることとなった。

 また、客観的な疲労評価を目的としたCFS診断における補助的検査(表2)についても、項目ごとにおける明確なカットオフ値が記載され、簡便な5つの検査項目の該当数によるレベル評価を診療所レベルで実施することが可能となった。各項目の検査意義については平成23年度報告書2)の中で解説しているので参照して頂きたい。

 CFS患者 60名、健常者79名について補助的検査レベル評価を検証した結果では、表3に示すようにCFS患者の91.7%がレベル2以上であり、41.7%がレベル4と診断されたが、健常者では48.1%がレベル1以下であり、レベル4を満たしている者はみられなかった2)。このような補助的検査異常はCFSに特有な所見ではないが、CFS臨床診断基準を満たした患者に対して客観的な疲労評価法を組み合わせたレベル評価を行うことにより、強い自覚的な疲労症状だけを訴える患者とCFS患者との区別が可能である。

 最近の女子大生の健康に関するアンケート調査結果をみてみると、半数近くの学生に強い疲労関連症状が認められており、CFS患者ではこのような日常生活の中で健常人が自覚している疲労感を単に強く訴えているにすぎないと誤解されていることも多い。しかし、身体活動量から得られる覚醒時平均活動量を調べてみると、女子大生の疲労度と覚醒時活動量には正の相関がみられ、疲労感が強い学生ほど活動量が多いという結果であった。このことは、疲労を客観的に評価するバイオマーカーを用いて調べてみることにより強い疲労関連症状を訴える女子大生とCFS患者とを区別することができることを示唆しており、疲労の臨床現場における混乱を防ぐことが期待できる。

 尚、最終的にはCFSの病因・病態を解明し、その病因・病態と密接に結び付いた検査所見によりCFSに特異的な診断法を開発する必要があることは言うまでもない。我々は、ポジトロンCT(PET)検査にてCFS患者の脳では前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、基底核などにおける局所脳血流量の低下や前帯状回を中心としたセロトニン系の代謝異常などがみられることより、CFSは種々の免疫物質によって引き起こされた脳機能障害である可能性が高いことを報告してきた10)。さらに、平成21-23年度CFS研究班において、症状の強い12名のCFS患者と10名の健常者を対象に脳内炎症の有無を調べることのできる特殊検査(活性型ミクログリアに結合する特殊リガンド(11C-PK11195)とポジトロンCT(PET)を用いた検査)を行ったところ、CFS患者では左視床や中脳に炎症が存在していることを世界で初めて明らかにした11)。このことは、少なくとも病状の重いCFS患者では脳内に炎症という器質的な変化もみられることを示唆しており、CFS診断において極めて有用な客観的な所見である。しかし、これらのPET検査は高額な検査費用が必要であり、また限られた研究所でしか実施することができないため、日常の疲労診療において活用することは困難である。

 そこで、平成25年度からの研究班では脳のPET検査にて明らかな異常が確認された患者を対象にしてCFS病態と密接に結び付いた簡便な検査所見を見出す臨床研究を企画しており、病因と直結したバイオマーカーを確立し、それに基づく診断・治療の開発を目指している。また、CFSは原因不明の慢性的な疲労のために日常生活や社会生活に支障をきたす病態の原因究明を目的に設定された症候群であるが、中には極めて激しい疲労関連症状が持続するため、食事、入浴、室内の移動などの基本的な活動にも介助が必要な重症例も存在している。したがって、CFSの病因・病態の解明においては症状の重篤度などにも留意した層別解析も必要であると考えている。

文献

1) 倉恒弘彦.慢性疲労症候群の実態調査と客観的診断法の検証と普及.  厚生労働科学研究(障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)) 平成24年度研究業績報告書(印刷中).
2) 倉恒弘彦.自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成.  厚生労働科学研究(障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)) 平成23年度研究業績報告書 平成24年(2012年)3月. 
3) Holmes GP et al.: Chronic Fatigue Syndrome: a working case definition. Ann. Intern. Med 108: 387-389, 1988.
4) 木谷照夫. 本邦におけるChronic Fatigue Syndromeの実態調査ならびに病因・病態に関する研究. 厚生省特別研究事業平成3年度研究業績報告書 平成4年3月.
5) Reeves WC et al.: Identification of ambiguities in the 1994 chronic fatigue syndrome research case definition and recommendations for resolution. BMC Health Serv Res 3(1):25, 2003.
6) Carruthers BM et al.: Myalgic encephalomyelitis: International Consensus Criteria.  J Intern Med 270(4):327-38, 2011.
7) 倉恒弘彦. 慢性疲労症候群診断基準の改定に向けて 日本疲労学会雑誌3(2):1-40,2008.
8) 倉恒弘彦. 慢性疲労症候群はどこまでわかったか? 医学のあゆみ 228(6):679-686, 2009.
9) 簑輪眞澄ほか.地域における疲労の実態とリスクファクター.愛知県豊川保健所管内の2市4町実態調査.厚生科学研究費補助金健康科学総合研究事業「疲労の実態調査と健康づくりのための疲労回復に関する研究」平成11年度研究業績報告書 pp19-44. 2000年3月.
10) 倉恒弘彦、渡辺恭良。慢性疲労症候群と帯状回 Clinical Neuroscience 23(11):1286-1291, 2005.
11) 渡辺恭良ほか. PETを用いた脳内炎症の分子イメージング研究. 厚生労働科学研究(障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)) 平成23年度研究業績報告書 pp52-53. 2012年3月.

 

表1. 慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準


前提Ⅰ.
1. 6か月以上持続ないし再発を繰り返す疲労を認める(CFS診断に用いた評価期間の50%以上認める)

2. 病歴、身体所見、臨床検査(別表1-1)を精確に行い、慢性疲労をきたす疾患・病態を除外するか、経過観察する。また併存疾患を認める

ア)CFSを除外すべき主な器質的疾患・病態を別表1-2に示す
(但し、治療などにより病態が改善している場合は経過観察とし、1年間(がん、主な神経系 疾患、双極性障害、統合失調症、精神病性うつ病、薬物乱用・依存症などは5年間)以上にわたって疲労の原因とは考えられない状態が続いている場合は除外しない:例えばコントロール良好な内分泌・代謝疾患、睡眠障害など)
イ)A.下記の患者に対しては、当該病態が改善され、慢性疲労との因果関係が明確になるまで、 CFSの診断を保留にして経過を十分観察する
    (1) 治療薬長期服用者(抗アレルギー薬、降圧薬、睡眠薬など)
    (2) 肥満(BMI>40)
  B.下記の疾患については併存疾患として取り扱う
    (1) 気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、身体表現性障害、不安障害
    (2)線維筋痛症、過敏性腸症候群など機能性身体症候群に含まれる病態

前提Ⅱ.以上の検索によっても慢性疲労の原因が不明で、しかも下記の4項目を満たすとき
(1) この全身倦怠感は新しく発症したものであり、発症の時期が明確である
(2) 十分な休養をとっても回復しない
(3) 現在行っている仕事や生活習慣のせいではない
(4) 疲労・倦怠の程度は、PS(performance status:別表1-3)を用いて医師が評価し、3以上(疲労感のため、月に数日は社会生活や仕事が出来ず休んでいる)のものとする

前提Ⅲ.下記の自覚症状と他覚的所見10項目のうち5項目以上認めるとき
(1) 労作後疲労感(労作後休んでも24時間以上続く)
(2) 筋肉痛
(3) 多発性関節痛。腫脹はない
(4) 頭痛
(5) 咽頭痛
(6) 睡眠障害(不眠、過眠、睡眠相遅延)
(7) 思考力・集中力低下
(以下の他覚的所見(3項目)は、医師が少なくとも1ヶ月以上の間隔をおいて2回認めること)
(8) 微熱
(9) 頚部リンパ節腫脹(明らかに病的腫脹と考えられる場合)
(10)筋力低下

臨床症候によるCFS診断の判定
(1) 前提Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、を満たしたときCFSと診断する
(2) 感染症後の発病が明らかな場合は感染後CFSと診断する
(3) 気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、身体表現性障害、不安障害、
   線維筋痛症などの併存疾患との関連を次のように分類する
   A群:併存疾患(病態)をもたないCFS
   B群: 経過中に併存疾患( 病態) をもつCFS
   C群: 発病と同時に併存疾患(病態)をもつCFS
   D群: 発病前から併存疾患(病態)をもつCFS
(4)前提Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのいずれかに合致せず、原因不明の慢性疲労を訴える場合、特発性慢性疲労(Idiopathic Chronic Fatigue:ICF)と診断し、経過観察する


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別表1-1. CFS診断に必要な最低限の臨床検査


(1) 尿検査
(2) 便潜血反応
(3) 血液一般検査(WBC、Hb、Ht、RBC、血小板、末梢血液像)
(4) CRP、赤沈(またはシアル酸)
(5) 血液生化学(TP、蛋白分画、TC、TG、AST、ALT、LD、γ-GT、BUN、Cr、尿酸、血清電解質、血糖)
(6) 甲状腺検査(TSH)
(7) 心電図
(8) 胸部単純X線撮影


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別表1-2. 除外すべき主な器質的疾患・病態


(1) 臓器不全:(例;肺気腫、肝硬変、心不全、慢性腎不全など)
(2) 慢性感染症:(例;AIDS、B型肝炎、C型肝炎など)
(3) リウマチ性、および慢性炎症性疾患:(例;SLE、RA、Sjögren症候群、炎症性腸疾患、慢性膵炎など)
(4) 主な神経系疾患:(例;多発性硬化症、神経筋疾患、癲癇、あるいは疲労感を惹き起こすような薬剤を持続的に服用する疾患、後遺症をもつ頭部外傷など)
(5) 系統的治療を必要とする疾患:(例;臓器・骨髄移植、がん化学療法、脳・胸部・腹部・骨盤への放射線治療など)
(6) 主な内分泌・代謝疾患:(例;下垂体機能低下症、副腎不全、甲状腺疾患、糖尿病など)
(7) 原発性睡眠障害:睡眠時無呼吸、ナルコレプシーなど
(8) 双極性障害、統合失調症、精神病性うつ病、薬物乱用・依存症など


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別表1-3. PS(performance status)による疲労・倦怠の程度


0:倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる
1:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労を感ずるときがしばしばある
2:通常の社会生活はでき、労働も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である
3:全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である
4:全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である
5:通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である
6:調子のよい日には軽作業は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している
7:身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である
8:身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している
9:身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている


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表2. CFS診断における補助的検査(客観的疲労評価)


1.身体活動量客観的評価機器から得られる睡眠時間
カットオフ値:448.5分以上を陽性と判定
(2~3Hzの加速度変化を閾値0.01G・rad/secで検知し、0をまたぐ加速度変化回数(ZC値)についてCole式を用いて睡眠・覚醒の判定を実施)

2.身体活動量客観的評価機器から得られる覚醒時平均活動量
カットオフ値:アクティグラフ(AMI社)を使用した場合、ZC値189.7以下を陽性と判定 

3.心拍変動解析による自律神経機能評価(HFパワー値)
 カットオフ値: 
  20歳代 365.9以下
  30歳代 349.3以下
  40歳代 250.0以下
  50歳代 122.7以下
  (心電図のRR間隔、加速度脈波のAA間隔の周波数解析より算出、年代ごとに評価し、上記のカットオフ値以下を陽性と判定)

4.単純計算課題評価 反応時間
カットオフ値:1.217秒以上を陽性と判定
(連続5分間コンピューター画面に表示された2つの数字の足し算を行い、回答に要した平均時間を算出、繰上げ有の結果のみを評価すること)

5.酸化ストレス評価:抗酸化力値(BAP)
カットオフ値:2532.2μmol/L以下を陽性と判定
(BAPテスト試薬(㈱ウイスマー)を用いて生化学自動分析装置により血液中の抗酸化力値(BAP:Biological Antioxidant Potential)を測定)

 客観的疲労評価によるCFSのレベル診断
 上記5つの検査項目の該当数により、レベル0~4の評価を実施する
(レベル0:全く該当項目が確認できないCFS、レベル1:1項目が確認できたCFS、レベル2:2項目が確認できたCFS、レベル3:3項目が確認できたCFS、レベル4:4項目以上が確認できたCFS)


○検査全般に関する注意事項○
*検査は基本午前中に実施する
*検査前日の夕食後から絶飲食として早朝空腹時に検査を行うことが望ましいが、 少なくとも検査4時間前よりは絶飲食とする(ただし、常備薬内服と飲水はOK)
*検査時には最終食事時間、採血実施時間を記録する
*全ての検査を実施する場合、自律神経機能、単純計算課題、採血、身体活動量客観的評価機器の装着の順番とする
*身体活動量客観的評価機器は睡眠時も含めて終日装着し(入浴時は除く)、睡眠時間と覚醒時平均活動量は、最低3日間の測定を行った結果を使用する
*身体活動量客観的評価はアクティグラフ(AMI社)以外の機器を用いても構わない
その場合、健常者とCFS患者を少なくとも30名ずつ比較し、研究班結果と同等の感度・特異度が得られるカットオフ値を設定して使用する
*心拍変動解析による自律神経機能評価は、最低5分間の安静後に実施する
*単純計算課題は、「できるだけ、速く、正確に答える必要がある」ことを被験者に説明して実施する

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3 CFS患者 60名と健常者79名における補助的検査レベル評価

 健常者(79名)

 CFS(60名)

 レベル0個以上

79名(100.0%)

60名(100.0%)

 レベル1個以上

67名(84.8%)

60名(100.0%)

 レベル2個以上

41名(51.9%)

55名(91.7%)

 レベル3個以上

14名(17.7%)

37名(61.7%)

 レベル4個以上

0名 (0.0%)

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