厚生労働科学研究費補助金(こころの科学研究事業)
(分担)研究報告書

自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と
慢性疲労診断指針の作成

脳機能解析と体液中バイオマーカーを用いた疲労の解析

研究代表者 倉恒 弘彦 関西福祉科学大学健康福祉学部、教授
研究分担者 渡邊 恭良 理化学研究所分子イメージング科学研究センター長

研究要旨

脳機能解析と体液中バイオマーカーを用いた疲労の解析を推進し、自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成に資する研究を行う。本年度は、
脳機能解析については、脳磁図による解析、PETを用いた脳内炎症の分子イメージング研究を開始した。

A.研究目的

脳機能解析や体液中バイオマーカー計測による客観的指標により、自律神経機能低下を来す慢性疲労を評価することが目的である。

B.研究方法

脳磁図では、「ポケモン効果」として知られた光の間歇的ストロボ効果が脳内で特別な周波数を持つ神経回路と同期し異常興奮を起こす現象を捉え、自律神経機能低下との関連性に研究を進める。一方PETでは、[11C]PK-11195を用いて慢性疲労症候群患者の脳内炎症像を探る。
(倫理面への配慮)
ヒト試験・臨床研究を行っている大阪市立大学の倫理委員会に申請し承認を得、倫理に対して十分な配慮の元に研究を行っている。

C.研究結果

 脳磁図の研究においては、健常人ボランティア脳では、ストロボライト点滅周波数に固有サイクルの反応が見られ、さらにこの反応は自律神経異常及び質問紙によって評価した疲労の程度と有意な相関を認め、これを慢性疲労・慢性疲労症候群患者で調べていく基盤ができた。PETでは、[11C]PK-11195を理研研究員(大阪市大研究員を兼務)が大阪市大の核医学検査室で調製し品質管理試験の後、倫理委員会の承認を得て、慢性疲労症候群患者の脳内炎症像を探る研究に着手した。現在、2名の患者の撮像が終了した。

D.考察

これまで調べてきたセロトニン神経系の異常についてのPET結果などとの照合を行っていく。また、PETと同時にMRIでの脳局所形態についての情報も得ることができる。

E.結論

脳磁図では、自律神経系機能異常の元となる神経回路の異常像が検出される可能性が高い。また、慢性疲労症候群患者において脳内炎症が存在するかどうかを判定することは今後の研究の進め方を定めるのに重要な情報となる。

F.健康危険情報

(分担研究報告書には記入せずに、総括研究報告書にまとめて記入)

G.研究発表

1. 論文発表
 Shigihara, Y., Tanaka, M., Tsuyuguchi,N., Tanaka, H., Watanabe, Y.: Hazardous nature of high-temporal-frequency strobe light stimulation: neral mechanisms revealed by magnetoencephalography. Neuroscience, 166(2): 482-490, 2010.
2. 学会発表
 Shigihara, Y., Tanaka, M., Tsuyuguchi,N., Tanaka, H., Watanabe, Y.: Effect of temporal frequency of visual stimulation on central nervous system. 2009 ISACM Conference, Athens, Greece, Sep. 3-5, 2009.

H.知的財産権の出願・登録状況(予定を含む。) 

1. 特許取得
2. 実用新案登録
3. その他    
  いずれも該当なし。